ケヤキの秋色の魅力
紅葉するのは、モミジだけではない。
秋にはいろいろな落葉樹がそれぞれの色づきを見せ、最も物寂しい季節である冬を前に、最も鮮やかな色どりを見せてくれます。
この秋の私の撮影テーマも、いろいろな樹の紅葉・黄葉を撮ること。
これまでの記事でも桜紅葉、蔦紅葉というものを取り上げてきましたが、今回の注目はケヤキ。
野山にも自生しますが、街路樹や公園の植樹としても馴染み深い樹木です。
身近すぎて逆に気がつかないこともありますが、このケヤキの秋色も実に美しい。
こちらは京都府立植物園西、鴨川沿いに植えられたケヤキ並木の紅葉。モミジに劣らないほどの真っ赤な色づきが青空に映えます。今月上旬の撮影です。
反対側の鴨川西岸にもたくさんのケヤキが植えられ、エノキの黄葉とのコントラストが美しく秋を彩ってくれます。
街路樹と違ってちゃんとした土の地面に植えられているだけに、どれも大樹に育っています。
ケヤキの秋色の魅力は、色づき方に個体差があること。そのためケヤキ並木が続いていても、同じ種類の樹木とは思えないほど多彩な秋色を楽しむことができます。
上は宝ヶ池公園での撮影ですが、同じケヤキが並んでいても、赤、黄、橙とそれぞれ違い、カラフルです。
これは遺伝子レベルでの違いで、それぞれの樹で何色に染まるかは決まっているということです。
こちらは八瀬の里山。奥のほうにある赤と黄色のコントラストが美しい。
逆のアングルからの撮影。
こちらは先の鴨川沿いのケヤキ並木をしたから見上げて撮ったもの。
こちらは鴨川もかなり上流に植えられたもの。
一樹種だけでも多彩な秋色を堪能できる。それを意識してみると、何気ない街路樹や公園の樹木でも、見方が変わってきそうです。
ということで、今回もご覧いただきありがとうございました。
モノクロームの秋
1年のうちで最も色彩豊かな季節といえば、この紅葉の季節、晩秋だというのは多くの人の一致するところでしょう。
たとえば、ご覧の通り。
私が季節の彩り撮影のメインフィールドとしている京都郊外・八瀬で撮影しました。
寂莫とした冬という季節を迎える前に、草木がその年の生命を最後に燃やし尽くさんとするばかりに彩りを溢れさせるこの季節。それは情熱的で華麗であるとともに、次に来る季節を予感させ、ある種の物寂しさも湛えているように思います。
そして、このようなカラフルな秋がある一方で、すでに冬の寂寥を兆すような、彩りのない秋というのもあります。
こちらは、同じく八瀬の、一帯が草原となっているとあるスポットにて。
色彩を失った草の穂が、晩秋の低い陽射しのなかで映し出されています。チカラシバという草です。
もう一枚。よりモノクロームに近づいた雰囲気となっています。
辺りにはもっと丈の高い、ススキも茂っています。
晩秋の陽光に浮かぶススキの穂。
彩りに満ちた秋と彩りのない秋。どちらも、季節の美というものでしょう。
ちなみに、この風景を撮るために草原に足を踏み入れたことで、先のチカラシバをはじめとした草の実が服にたくさんまとわりつき、取るのにひと苦労でした。
自分では動けない植物が、より遠くに種子を送り届けるための工夫なのでしょうが。
ということで、今回もご覧いただきありがとうございました。
蔦紅葉の美しさ
「蔦紅葉」という言葉をご存じでしょうか?
秋に赤く色づくツタの葉の美しさを表す言い方です。
もともと「もみじ」というのは木の葉が色づくことを意味する「もみづ」という古語の動詞に由来し、そうした植物全般に当てはまる言葉です。色づき方によって「紅葉」とも「黄葉」とも漢字を当てます。
だから、前の記事で触れた「桜紅葉」という表現もあるわけです。
そのなかでも、特に紅葉の美しいカエデ科の植物を指して「モミジ」と呼ぶようにもなり、代表的な「イロハモミジ」をはじめとする種名にも使われるようになったという次第です。
ということで、秋の「もみじ」が美しいのは「モミジ」ばかりではありません。
「蔦紅葉」の美しさというのは、たとえばこんな感じです。
こちらは京都御苑の南西角、閑院宮邸跡の庭園にて。現在公開中です。
これまた綺麗に黄色く色づいた、樹高20mはあろうというエノキの大樹。その梢にまで伸びたツタが赤く色づいて、見事な秋色のコラボを演出しています。
上の写真は御苑の外の道路から望遠撮影したものですが、同じく道路側から角度を変えて。
モミジとも合わせて。赤色の色調の違いも見所です。
庭園内からはこちら。下から見上げるように撮ったものです。
庭園内にイロハモミジも植えられているので、こんなふうに合わせることもできます。
唱歌『もみじ』に「松を彩る楓や蔦は」という歌詞がありますが、こちらはまさにその通り。
いま紅葉シーズンただなかですが、「モミジ」ばかりが紅葉ではない。そうしてみると、さらにこの季節の楽しみも増えると思います。
ということで、今回もご覧いただきありがとうございました。
山桜の春と秋
「桜紅葉」という言葉があります。
桜の葉が秋に紅葉するさまを表したものです。
秋に鮮やかな色づきを見せるのは、モミジ(カエデ)だけではありません。さまざまな落葉樹がそれぞれの色合いに染まって、秋景色を彩ってくれます。
桜もその一つで、至る所で目にするソメイヨシノも、秋には赤く色づいて、春の鼻にも劣らない美しさを見せるものです。
野生種であるヤマザクラもまた、秋には美しい色づきが見られます。こちらがこの秋撮影の一枚。私の季節の彩り撮影のメインフィールドとなっている京都郊外・八瀬でのものです。
二つのヤマザクラの樹が色づいていますが、特に左側の樹が真っ赤で美しい。
春の新緑の時期に撮ったのはこちら。配置と周囲の様子から、同じ二本の樹を撮ったものだとおわかりでしょう。
春色と秋色、いずれ劣らず美しいものです。こんなふうに比べられるのも同じ場所での撮影を重ねていればこそです。
ソメイヨシノは挿木で人為的に殖やされたものであるため、日本中どの樹も遺伝子型は同じで、いわば「クローン」です(「クローン」とは元来挿木を意味します)。開花時期も花の色もみんな同じで、秋の紅葉もまた、時期も色づきもそうなります。
けれどもヤマザクラは野生種なので一本一本遺伝子型が違い、花の色も開花時期も、また紅葉の色や時期もみんな異なります。だからこの写真の二本も、ご覧の通りの違いがあるわけです。
ソメイヨシノにはないヤマザクラの魅力については、こちらの記事でも語っていますので、こちらもどうぞ。
ということで、今回もご覧いただきありがとうございました。
青空がしばらく見られなくなる前に
風景写真を撮っていると季節にはとりわけ敏感になりますが、私の季節感だと、一年を季節で分けるなら、「四季」では不十分で、「六季」にしたくなります。
こちらの記事でも触れました。
春夏秋冬ではなく、春、初夏、梅雨、夏、秋、冬。
「初夏」「梅雨」は独立の季節として扱いたくなります。
「初夏」は4月下旬、桜が完全に散った頃から、6月の梅雨入り前までの約1か月半。新緑と澄んだ青空の季節。この時期の清涼感は他に代えがたいもので、私も1年で最も好きな季節です。
今年は梅雨入りが遅めで、その分「初夏」が6月半ばまで続いている感があります。でももうそろそろです。初夏の澄んだ青空を見られるのもこれが最後、梅雨明けまで青空はなかなか見られなくなる、ということで、ここで見届け、写真に収めておきました。
まずは鴨川から。丸太町橋のあたりです。
澄んだ青空に、川の水も澄んでいます。
飛び石の上に立って。
街中を流れる川がこんなに澄んでいるのは、本当に貴重なこと。京都を訪れた外国の人が驚くことの一つとも言います。都会の川は濁っているのが当たり前なのに、と。
川辺のヨシがそよぎ、初夏の清涼さを加えます。
続いては桂川で。西大橋から上流を望んで。
下流方向。
川沿いには田畑が広がります。田植え間もない時期ならではのすがすがしさ。
比叡山を遠望して。
こちらは愛宕山を望む方向。
少し川から離れた田んぼで。
ということで、梅雨に入って青空が恋しくなる前に、存分に見届け、写真に収めたこの日曜日でした。
それでは、今回もご覧いただきありがとうございました。
最高の新緑日和
新緑のベストな季節は、4月。5月では遅すぎです。
当ブログで、繰り返し強調してきたところです。
去年は極端な暖冬のため季節の進みも早く、京都でも3月末から芽吹き始めるほどでしたが、今年も例年より早めとはいえ、去年に比べれば1週間ほど遅く見頃が訪れました。
午前中は曇りがちでしたが、正午を過ぎた頃から晴れ渡り、昼下がりには最高の青空に。
ということで、以前にこちらの記事でも紹介した、私の見つけた知られざる新緑スポット。
鴨川上流・山幸橋付近まで足を運びました。
ご覧の通りの青空。
この一帯は山腹のほとんどが落葉樹に覆われているため、今の季節には、山一面が新緑に彩られる光景が見られます。
しかも、今日が、淡くも繊細なパステルの色合いという、新緑の魅力がいちばん際立つタイミングでした。
この辺りの新緑がこんな彩りを見せるのは、平均すると4月20日前後。毎年、この周辺の週末に撮影に行く予定を立てるのですが、今年は平年より数日早め、しかも最高の青空に恵まれて、ここまで美しく撮れました。
この後鴨川の随所で新緑撮影。
この辺りは特に、芽吹いて間もない新緑だからこそ見られる繊細で瑞々しい色合いが堪能できます。
やはり新緑と青空の相性は抜群です。
ということで、今回もご覧いただきありがとうございました。
京都で初日の出を撮影するには~穴場を紹介します~ 増補版
まもなく2021年も暮れます。
新しい年を迎える前に、ここで「初日の出」にまつわる以前の記事をアップデートしましょう。
以前の記事はこちら。
当ブログでもたびたびアクセス頂いている記事ですが、もう1か所、加えたいところもありますので。元の記事は「令和最初の初日の出」の撮影に向けてという意味合いもあったので、上書きせず、そのままにしておきます。
ということで。
まあ「京都 初日の出」で検索すればすでに名のあるスポットを紹介しているサイトはいくつもあります。でも京都市から遠く離れた天橋立はアクセスが大変。愛宕山も登れば最高の朝日観望スポットでしょうが、寒いこの時期にはきついでしょう。市内でアクセス自体は簡単な京都タワーはもちろん素晴らしい眺望ですが、ネット情報では早朝5時から長蛇の列ができるらしく、寒い中で待ち続けるのはこれまた難儀必至です。
ということで、こういう名所レベルのスポットではなく、「穴場」から狙うにはどうするか、です。
まず基本。東西と北の三方を山に囲まれた京都市内では、そもそも日の出・日の入りの瞬間を見届けることはできません。ですが当然、夕日なら市東部、朝日なら西部で撮る方が、山に隠れにくくて有利です。
私の在住が京都市北東部ということで、夕日撮りに適したスポットは、いろいろ見つけています。こちらの記事です。
では朝日撮影に適したスポットはどこか…というのは、夕日ほど探りつくしてはいません。ただ、元日の朝にたびたび足を運んで、ここなら綺麗に日の出が撮れるというスポットは知っているので、こちらを紹介です。
それが、当ブログでもたびたび紹介している嵯峨・広沢池の付近です。
池のほとりから撮ってもいいのですが、池の西側に広がる田園地帯から望むのがベストです。
ここなら田畑が広がって視界が開けているので、田園風景ともども、朝日が絵になります。過去の元旦の撮影からの紹介です。
目を東側、愛宕山方向に向けてみると。
初日に雪化粧の愛宕山も色づいています。
場所を映して広沢池のほとりから。
冬のこの時期は鯉上げといって水が抜かれているので、「水面への映り込み」については残念なところです。
もう一つのおすすめスポットは、桂川です。
京都でも西部を流れているので、場所的にも好適。そして川幅が広く視界が開けているので、朝日を撮るには絶好です。川の水面への映り込みもあるので、美しい朝日の光景が期待できます。
地図はこちら。
ご覧の通り、市街地では南北にまっすぐ流れる鴨川と違って蛇行しているので、どのポイントで撮るかも重要。今年は上野橋(「京都市市民スポーツ会館」の辺り)で撮影しました。
ちょうど元旦の日の出の方向が橋上から見て下流側なので、真向かいで撮れます。
こんなふうに初日が昇り、川面に映り込みます。
アップで。
上流側を望むと、右手に愛宕山が見え、朝日に染まっています。時間的には橋から朝日が見えるより前のことでした。山頂部は、それだけ早く日が当たるわけです。
この上野橋は、初日の出を撮るには絶好のロケーションと言っていいでしょう。おすすめの撮影スポットだと確認しました。
嵐山の渡月橋も方角的に同じように真向かいで初日が撮れると思いますが、おそらく人出は多いと思います。
今年の初日の出は京都では午前7時5分。そもそも年ごとでほとんど変動はありませんが。
山から顔を出すのにはもう少し時間がかかりますが、空が明るんでくる6時50分ごろにはこれらの場所に着いて、スタンバイしておくといいでしょう。
ということで、北嵯峨と桂川は京都の初日の出撮りの穴場です。京都で初日の出を撮ろうという方のご参考になればと思います。
それでは、今回もご覧いただきありがとうございました。