光つかまえて~雫と海と季節のフォトブログ~

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5月では遅すぎる~新緑は4月にこそ撮りたい3つの理由~

 新緑の季節と言ったら何月ですか?

 日本でこんな質問を尋ねれば、多少の地域差はあるとしても、大多数の人は5月と答えるでしょう。時候の挨拶でも、5月であれば「新緑の候……」と書き出すのが定番となっているところにもうかがえます。もちろん新緑は、日本各地で5月に見ることができます。

 でも、本当に新緑の魅力と奥深さに触れるためには、また素敵な新緑の写真を撮るためには、5月に入ってからでは遅すぎる。それがこの記事のテーマです。

 新緑のベストな見頃は、4月。芽吹き始めて日もない頃から見てこそ、本当の美しさに出会えます。

 巷では5月になると「新緑の季節になりました」と言われますが、実はその頃には、もうベストな時期は終わりかけています。新緑の季節と言えば5月だと決めてかかって、ゴールデンウィークの頃に新緑を見に行こう……というつもりでは、大切なものをすでに見逃してしまっているかもしれません。

 なぜ4月こそ新緑なのか。その理由を語っていこうと思います。

 基本的に私の住む京都の気候に即してお話ししていきますが、本州中央部の三大都市圏近辺であればほぼ気候条件は同じと考えてよいでしょう。他地域であればいくらか時期のずれがあるでしょうが、おおむね「桜の季節の終わり頃から始まる」を目安にしておけば外すことはないと思います。

 

①春先ならではの繊細な色合い

 最大の理由はこれでしょう。芽吹いて間もない新緑は、まだ葉緑素も生成しきらない。だから淡いパステル調の、繊細でみずみずしい色合いが見られる。この美しさが比類のないものだからです。

  たとえば、こんな感じです。

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 この美しさは、実にはかないものです。本当につかの間にしか見られません。1年のうちでも、10日と見られるかどうかでしょう。私の住む京都であれば、4月20日頃を中心とした前後のそれぞれ数日間ぐらい。それを過ぎれば葉の緑はいよいよ濃くなり、まだ新緑らしいみずみずしさは残っているものの、あの繊細な色合いは失われています。5月に入ってからでは、確実に遅すぎです。

 

 ②彩りの変化を楽しめる

 萌え出て間もない4月から撮り始めるからこそ、淡いパステルグリーンから、しだいに緑を深めていく様子も見られます。同じ場所で撮り続けていると、本当に日刻みというぐらい、緑の彩りも豊かさも変わっていく様子がわかります。

 それぞれ、同じ場所で撮影したものです。

 4月20日頃から。

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数日でこんなに変わります。

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4月末。

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こちらは5月の連休に。もうずいぶん緑も濃くなっていて、繊細な色合いは終わりかけています。

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鴨川上流。やはり4月20日頃。この繊細な色合いです。

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4月も末ぐらいになると、まだ新緑らしさは残るものの、ずいぶん緑も濃くなっているのがわかるでしょう。

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5月も半ばになると、もう新緑というより深緑です。

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こちらは八瀬で、私が(青空と合わせて)「色の三段重ね」と呼んでいるスポット。淡い新緑に春紅葉や山桜が彩りを添えます。

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まだ春紅葉も残っていますが、緑はやや濃くなりました。

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新緑と、低層の常緑のコントラスト。4月末だとこんな感じです。

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5月も連休を過ぎると、低層の杉とほとんど同じ色になり、もはや新緑とは呼べなくなります。

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 5月に入ってからはほとんど緑も仕上がっていて、もうこんな変化はありません。

 

③カラフルな春色が見られる

 4月中だと、山を彩るものは、新緑だけではありません。

まず山桜。挿し木で増やされたソメイヨシノと違って野生種なので花の色も白から淡い桜色、濃いめのピンクまで個体差があります。

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 白の山桜と青空。

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 山桜の花の色の違いもわかるでしょう。

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さらには春紅葉。春先に芽吹いたばかりの葉が、まだ葉緑体が合成されていないために緑色にならず、秋の紅葉のときと同じアントシアニンが勝って赤っぽく見える現象です。モミジだけではなくいろんな落葉樹で見られます。

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この繊細な彩りが好きです。

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さらに、芽吹いて日も浅い時期であれば樹々で緑の濃さもまちまちですから、たださまざまな色合いの新緑色を目にすることもできます。

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これらを合わせて、秋色のカラフルさにも劣らない彩り豊かな光景が見られるのは、4月のうちしかありません。

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 5月に入れば山桜もほぼ散り、春紅葉だった葉もすっかり緑に色づいて、ほぼ緑一色の光景になってしまいます。

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 もちろんその新緑も十分に美しいのですが、4月のカラフルで繊細な春色の景色に比べると、もう大切なものは失われてしまった感が否めません。

 こうした3つの理由から、新緑はなんとしても、4月のうちから撮影に入ったほうがいいのです。だいたい桜の季節の終盤、4月10日ぐらいからスタート。5月の新緑撮りは、せいぜいそれまでの撮影の「締め」ぐらいに見た方がいいぐらいです。もう本当のベストシーズンは終わりかけています。

「新緑=青もみじ」と並んで、「新緑の季節=5月」も固定観念として定着している感があります。このせいで新緑の知られざる美しさがどれだけ見逃されているかと思うと、なんとももったいない気がします。「夕焼けの季節=秋」(本当は夏です)と並んで、ずいぶん罪作りな通念かもしれません。

 今年の撮影に間に合うように、3月のうちに投稿しました。みなさまもぜひ「4月の新緑」ならではの魅力を見逃さないでくださいね。

 桜の開花も早いという予報も出ているようなので、特に早めから準備しておいた方がいいかもしれません。

 それでは、今回もご覧いただきありがとうございました。