光つかまえて~雫と海と季節のフォトブログ~

写真を通してつかまえた光をお届けしていきます

夏こそ夕焼けのベストな季節である3つの理由

 今日は6月1日。気象学上は夏に入ります。といっても5月下旬があれほどの暑さでしたから、今さらという気もしますね。

 もともと私の季節感覚だと5月も「春」という認識が薄く、むしろ「初夏」という季節です。春でも夏でもない。

 自然・風景写真を撮っていると季節の変化には当然のように敏感になりますが、そうすると四季という分け方が実感にそぐわなくなってきます。春・初夏・梅雨・夏・秋・冬という「六季」の方がなにか実感に近い。

 ともあれ一般にはこれから夏です。以前の記事でも触れましたが、「夏こそ夕焼けの季節である」ことを語りたいと思います。

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 夕焼けの季節というと一般には秋だと思われがちです。清少納言の『枕草子』の影響も大きいのでしょう。春夏秋冬を一日に譬えるなら秋は夕暮れに対応すること、秋の季節感に夕景の物寂しさが合っていることなども理由かもしれません。

 けれども、美しい夕焼けを撮りたければ、ベストな季節は実は夏です。夕焼けを撮るなら秋だと思って撮影の用意をしていないと、後悔するかもしれません。カメラを持っていれば、もっといい撮影ポイントにいれば……と。

 いざ撮影に臨んでも美しい夕景に出会えなかった「空振り」よりも、美しい夕景を目の当たりにしながら(あるいは夕焼けが綺麗だったことを後で聞かされて)撮影できずに終わる「見逃し」の方が、写真撮りとしては圧倒的に残念なことですから。

 こちらはとある年の梅雨明け直後にわが家近くで撮った夕景。

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 ということで、夏にこそ夕焼け撮影を狙うべき理由を3つ挙げましょう。

 

1. 日没時間が遅い

 日が長いので、夕焼けも遅い時間帯になります。私の住む関西地方であれば、日の入りは午後7時前後。夕焼けは日没後20-30分後まで見られますから、 この時期は7時台になります。

 これなら、ある程度仕事が早く終わった日なら、平日でも撮るチャンスがあります。日の短い季節であれば(冬至の頃なら関西でも日没は5時前)休みの日でなければまず夕焼けなんて撮れないことを考えれば、それだけ撮影のチャンスが増すというものです。

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 こちらはとある年の6月末、仕事帰りの阪急電車の中から撮った桂川の夕焼け。午後7時半頃です。チャンスは桂川の鉄橋を電車が通過する時しかないと見て、その瞬間を狙っていました。コンデジですが、カメラを持ち歩いていればこそ撮れたわけです。

 

2. 赤く染まりやすい

 これは、夕焼けが生じるメカニズムと、日本の夏は湿度が高いことと関係しています。夕焼けとは、地平線近くに太陽があると光が大気を通過する距離が長くなるため、それだけ大気中の成分に波長の短い光が散乱されやすくなり、太陽からは波長の長い赤系の光だけが届くようになって生じる自然現象です。太陽は地平線下に没してもしばらくは上空の雲を照らし上げ続けるので、雲が赤く染まります。

 光を散乱するものとして、大気中の水蒸気は大きな役割を果たしています。

 空気が澄んで乾いている時にはもっと波長の短い黄色系の光も散乱されずに届きますから、夕日も雲もあまり赤く染まりません。快晴の日には太陽もわずかに橙色を帯びた程度で没してしまい、むしろ残念な夕日になりやすいのもこのためです。晩秋から冬にかけてはそういう状態になりやすいものです。

 夏であれば湿度が高い、つまり大気中の水蒸気が多いので(たとえ湿度の数値は低くても、気温が高ければ大気の飽和水蒸気量が上がるので水分の絶対量は多くなります)、それだけ赤以外の光が散乱されやすく、最も波長の長い赤い光だけが残る。その結果として、雲が真っ赤に染まる美しい夕焼けが生じやすくなります。

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 8月のお盆の前ぐらいにわが家近くで撮った華麗な夕焼けです。

 単純に、夏こそ夕焼けが最も美しい。それこそが最大の理由です。夕焼けは俳句では秋ではなく夏の季語。昔の俳人たちが、ちゃんと観察していたからこそでしょう。

 秋に入ってもしばらく華麗な夕焼けは見られますが、だいたい9~10月初めまで。秋雨や台風のために、まだまだ湿度の高い日も多いからです。秋も深まるとそういう夕景はあまり見られなくなります。

 

3. 全方位の夕焼けが見られる

 もう一つのポイントは、夏には西空だけでない、他の方位の雲までが染まる「360°の夕焼け」がよく見られる、ということがあります。

 こちらは、以前の記事でも紹介した、比叡山を見上げる田園での撮影です。

 

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  2年前の6月の撮影です。

 ご覧の通り、西空は鮮やかに真っ赤に焼けています。ここでは田植え間もない時期なので水田への映り込みも美しい。

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 こちらは比叡山も見える北東の方角に向かって撮影したものですが、それでもこんなに染まっています。

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 こちらは同所での別の日に撮影したものですが、比叡山を正面に、ほぼ真東の方向で撮ったのに、東の空もここまで染まっています。

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 こんなふうに西だけでなく北や東の空まで赤く染まる。空一面、全方位の夕焼けが見られるのも、夏ならではです。

 今のところその原因を説明している(信頼できる)資料に出会ったことはないので仮説ですが、太陽の位置関係によるものと思われます。夏の太陽は昼間では高い位置にあって地上も空も広い範囲を照らしますが(それが夏の気温が高い理由です)、地平線下に沈んでも照らす範囲が位置関係上冬よりも広い。だから西だけでなく北や東の空まで光が及ぶ。それが原因ではないかと考えています。もう少し調べてみたいところですが、「全方位の夕焼け」は夏ならではの光景であることは経験的に間違いありません。

 ということで、これからの季節、夏こそ美しい夕焼けに出会うチャンスと見て、みなさまもご用意ください。きっといい写真を撮れる機会も増えるはずです。

 それでは、今回もお読みいただきありがとうございました。