京都・鴨川の桜2023
あまりにも早く始まり、当然終わるのも早かった今年の桜の季節。
例年ならまだ見頃のただなかという時期なのに、もう街中の桜もほとんどが葉桜、花びらが残っていればいいほうという状態です。
今年入学の学生さんたちなど、入学式の頃にはもう桜はほとんど散っていて、「桜とともに入学」することができなかったんじゃないかと思います。
ということで今年の桜関連の投稿は「ふりかえり」となりますが、まずは身近に桜の名所がいくらでもある鴨川から。
こちらのショットをどうぞ。
北大路橋から少し下流のあたりでの撮影ですが、ユキヤナギと合わせての春色コラボ。青空をバックに、真っ白と桜色が映えます。
このアングルは気に入っていて、昨年も撮ったものの青空に恵まれなかったので、今度こそ望み通りの一枚で撮れました。
さらに新緑とあわせて。
桜と青空。
大文字山をバックにも。
場所を変えて、北山大橋西岸でケヤキの新緑とのコラボ。桜の開花が早ければ、新緑の芽生えも早かった今年の春です。
青空の下で、例年になく早い春の季節感です。
それでは、今回もご覧いただきありがとうございました
夕桜の愉しみ
「夕桜」―この言葉の響きもなかなかいいものです。
3月が異例に暖かかったこの春は、当然のように桜の開花も早く、お彼岸の頃にはもう咲き始めていました。
桜の季節の終わりもやはり早く、例年ならいちばんの見頃となるだろう今の時期には、もう葉桜となっている樹が大半になっています。
ということで、この春の桜の振り返りです。
今年の桜の季節には、たびたび印象深い夕焼けが見られました。
冬の間は夕焼けはほとんど見られないものですが、春に入ると、いちばんの見頃である夏(秋ではありません)ほどではないものの、たびたび夕焼けに出会えるようになります。
そして今年は、ちょうど桜の見頃の時期にうまく合わせたように焼けた日がありました。
まずはこちらから。京都は鴨川・北大路橋からの撮影です。
南から東の空にかけての雲も染まるなど、夕焼けが全方位になるのは夏に多い光景ですが、珍しく春先にもこうなりました。
大文字山をよりアップして。前景に並ぶ満開の桜が、東空の夕焼けに映えます。
こちらは比叡山。やはり東空の夕焼け雲の下、桜とユキヤナギが春を飾っています。
東空まで焼けてくれたおかげで、桜まで順光で撮れたのが気に入った点。
夕桜、つまり夕日や夕焼けとコラボして桜を撮ろうとすると、どうしても逆光になって、桜が暗くなりやすい。肝心の桜が目立たないというのが不満として付きまといます。夕暮れ時に西の方向に撮るとどうしてもそうなってしまうわけです。
夕焼けが東空まで及んだおかげで、それが避けられ、桜も桜色のまま順光で表せることになったわけです。
こちらは東岸から西空の撮影。ご覧の通り夕焼けは待つかで素晴らしかったのですが、桜は暗くなってしまっています。
さて、また別の日。
鴨川デルタから上流側の葵橋の付近での撮影。
この日は春先には珍しいぐらいの焼け方で、川面も赤く染まっていました。
さらに真っ赤に焼け、桜もなんとか暗くならずに桜らしさ残して撮れました。
別の日、こちら側の桜越しに。この日の染まり方はこんなものでした。
これまた別の日。高野橋で染まる雲を見つけ、これは夕焼けが行けるかも、と思い北大路橋付近まで移動。
見頃も終りに近づいた桜越しに撮ります。
西空は真っ赤な染まりようでした。
夕焼けそのものは見事でしたが、位置的に、対岸の桜とともに夕焼けを収めるのは難しい場所だったのが心残りです。移動する時間はありませんでした。
ということで、異例に早く始まり終わろうとしている今年の桜の季節ですが、たびたび美しい夕焼けとコラボできたのが、今年の特色だったと思います。
それでは、今回もご覧いただきありがとうございました。
春紅葉の味わい~京都・八瀬より~
これは、秋の写真ではありません。
京都郊外、秋は紅葉の名所として知られる八瀬で、3月末に撮影したものです。山桜もあるので、春の写真であることがおわかりかと思います。
みなさまは「春紅葉(はるもみじ)」という言葉をご存じでしょうか。
春先、芽吹いて間もない若葉が、まるで秋の紅葉のように見えることがあります。秋ではなく、春の紅葉。それを指すのが「はるもみじ」という言葉です。
芽生えたばかりで葉緑素が十分に生成できていない若葉は、紫外線に弱い。その葉を保護するため、紫外線を吸収するアントシアニンという色素を生成する。これは秋に紅葉をもたらすのと同じ物質なので、赤っぽく色づいて見える、というわけです。
「もみじ」というのは本来葉の色づき全般を指す言葉ですから、この現象はモミジだけでなく、他の落葉樹にもみられます。
葉緑素はほどなく生成されるので、秋のように真っ赤に染まることはありません。短期間で新緑色にとって代わられていきます。
もう青々としてきたモミジもあります。
ヤマザクラも春紅葉が見られる樹で、上の満開の樹と、下のほぼ散って赤い葉を茂らせている樹とが対照的です。野生種なので個体差が大きく、開花時期にも差があるのです。
散るとすぐ青葉を茂らせるソメイヨシノと違い、葉桜になってもまず春紅葉になるのが、ヤマザクラの特徴です。
数日もすればこんなに青々としてくるので、芽吹いて間もない、わずかの間しか見られない光景でした。桜の開花も異例に早かった今年は新緑の芽吹きも早いので、ここではもう春紅葉の時期は過ぎかけています。
ということで、「春紅葉」という現象を知っておくと、春先の季節感を味わううえでも、一段と楽しみが増す、というお話でした。
それでは、今回もご覧いただきありがとうございました。
京都高雄・西明寺のミツバツツジ2023
秋には紅葉の名所として知られる京都郊外、高雄。
春の桜の季節にはそこまでの賑わいはありませんが、実はここには桜とは別に、知る人ぞ知る絶景が出現する。
こちらですでに取り上げた、槙尾山西明寺の裏山に群生するミツバツツジ(より正確にはコバノミツバツツジ)の群生です。
桜の季節に訪れると、突如として山一面が彩られる光景に出会えます。
上の記事で触れたように、2年前に行った時にはやや見頃を過ぎていて、まだ花は残っていたものの、新緑のなかに埋もれるような状態でした。
例年なら4月10日ぐらいが見頃で、それぐらいの時期に行ったのですが、一昨年も今年に似て春の訪れが早く、桜もこの時期にはおおむね散っているぐらいだったため、ベストな時期を外してしまったようです。
今年も春の訪れが異例に早く、一昨年と条件が似ているなら、4月初めにこそ行くべきだと見て、昨日、足を運びました。
ご覧の通り、大当たり。最高の青空の下、見事にベストな時期の光景に立ち会うことができました。
山腹一面がこのように、ツツジのピンクに彩られるのです。
植えられたのではなく自生しているらしく、ここに元々生えていた樹木が伐採されたあとに進出して、優占種となった結果のようです。近辺にもいくらか、自生しているスポットがあります。
せっかくなので、何枚も。
山の上層の杉林とのコントラスト。
近くの桜越しに。これで見てもわかるように、桜の見頃とだいたい重なります。
ところどころモミジも生えていて、青もみじの新緑も彩りを添えます。
山桜もちらほら生えています。ツツジもヤマザクラも個体差があるので、よく見ると花の色の濃淡も微妙に違って、味わい深いものです。
もう1枚、山桜のコラボで。
こちらはやや遠景で全貌を。
群生部分のみのクローズアップ。
という具合に、今年は最高のタイミングで撮ることができました。
来週末まで見頃が続いているかどうかはわかりませんが、よろしければみなさまもどうぞ。
実はその前に嵐山で撮影していたのですが、それについてはまたの機会に。
それでは、今回もご覧いただきありがとうございました。
3月の新緑2023
異例の暖かさだった今年の3月。私の住む京都でも、春分の日頃には桜も咲き始めていました。下手をしたら3月中に散ってしまわないかというぐらいでしたが、どうにか4月に入るまでは持つようです。
折からの気候変動ゆえでしょうが、2年前、2021年の春もこれに近かったので、そこまで驚きではないところです。
桜が早ければ、新緑の芽吹きも早い。
新緑は5月より4月こそ見頃。これは当ブログでは再三強調しています。
何より、芽吹いて間もない若葉の繊細な色合いが見られるのは春先だからです。
とはいえ、それはたいてい4月の話であって、3月から新緑が方々で見られるとは、今年の季節の異例ぶりが見てとれます。一昨年でもここまで早くはなかった気がします。
こちらは春分の日頃、鴨川上流での撮影。柳は他の樹種に比べても新緑の芽生えは早いものですが、こんな時期にもう、みずみずしい新緑を芽吹かせています。
同じくケヤキで数日後。もうずいぶん青々としてきています。
ケヤキは一本一本の個体差が大きく、秋の色づきも黄色だったり赤だったりと違ったりしますが、こんなふうに新緑の芽生えるペースも違うことがわかります。
鴨川西岸で満開の桜とともに。桜と新緑、時期的には若干ずれることも多いですが、こんなふうに1枚に収められると季節感ありありです。でもまだ3月。
ヤナギも合わせ。奥のケヤキはまだ芽生えて間もないようです。
こちらは鴨川東岸での撮影です。
私が新緑撮影のメインフィールドとしている八瀬の辺りの高野川。
見頃は新緑もまだこれからですが、3月からこれだと、時期的にもかなり早そうです。
年ごとの季節感を比べるのも、自然写真撮影の楽しみの一つです。
ということてだ、今回もご覧いただきありがとうございました。
彩りの秋~京都・八瀬もみじの小径より~
今日は11月30日。
明日には急激に冷え込む予報が出ていて、名実ともに秋の末日となりそうです。
この秋に出会えた彩りの数々はこれから改めて振り返っていきたいところですが、まずは前回の記事でも取り上げた、京都郊外は比叡山麓・八瀬の「もみじの小径」。
ここはその名の通りたくさんのモミジが見られますが、それだけでなく、樹種豊富な里山の林らしく、バラエティ溢れる秋の彩りの競演が見られるのが何よりもの魅力。
「小径」に沿って歩くより、道路側から眺めて、比叡山腹に広がる雑木林を見渡していろんな秋色を楽しむ方が、ここの魅力はもっと堪能できるように思います。
晩秋には紅葉狩りの観光客でかなりの賑わいを見せる場所ですが、そんなふうに眺める人をあまり見かけないのは、ちょっと勿体ない気もするぐらいです。
私にとっては比較的近場なので、この秋は休みのたびに足を運んで、ここの秋色の変化をウォッチしてきました。ここでみなさまと分かち合いましょう。
ここのモミジの色づきはわりと早めです。
10月末に行った時にも、もう紅く色づき始めを見せています。
数日後の文化の日。
だんだんモミジの赤も深くなり、もう見頃といっていいぐらいのものも見られます。
これにヤマザクラの紅葉がコンチェルトが加わり、背景の常緑樹とともに秋色のコンチェルトを奏でます。
その週末。だんだん他の樹種も秋色に染まり始め、カラフルさが増してきます。
こちらは山のだいぶ高所を望遠撮影したもの。広がる杉の常緑樹林をバックに、山中にも多彩な秋色が競演します。
この辺りはモミジの色づき方も一本一本違い、いったい何色あるのかと思えるほどカラフルなのも見所です。
次の週末、11月半ば。見頃はこの後もしばらく続きますが、一番ヴィヴィッドだったのはこの時期でしょうか。街中の寺社の紅葉と比べてもやや早めです。
黄色く色づいた落葉樹(クヌギだと思います)が彩りを添え、モミジの赤とベストマッチ。
モミジもいかにもという赤から紫がかったもの、真紅ともいうような深い色合い、橙寄り、青みを残したものまで、ただ「紅葉」と呼ぶのでは尽くせないような豊かな色調が、ここに集まっています。やはり最大の色彩の魔術師は、自然そのものです。
こちらはモミジがいちばん生い茂るところ。
モミジの背景で、他の落葉樹たちも秋色に燃え始めています。
この辺りは順光で撮れるのは正午を過ぎたあたりで、これまでの写真はみんなその時間帯での撮影でしたが、昼前の斜光ぎみの光のもとで撮るとこんな感じ。
よりコントラストも際立っているようです。
11月後半にも見頃は続きますが、それはまたの機会として、ここまで、鮮やかな秋色をお楽しみいただけたでしょうか。
ということで、今回もご覧いただきありがとうございました。
新緑が美しい場所は紅葉も美しい
紅葉撮影は毎年秋の最大の楽しみといっていいのですが、単に「紅葉の季節になったから撮る」だけだった頃と比べても、ここ何年かで私の撮影テーマも大体固まってきました。
それは「秋を彩り豊かに撮る」ことです。モミジの赤ばかりでなく、いろんな樹種の、黄色や橙の、それぞれの色づきを合わせて撮る、ということです。
京都にいれば寺社で「紅葉の名所」はたくさんありますが、そういうスポットだとモミジ一色になりやすい。むしろ京都を囲む里山の雑木林こそが、「カラフルな秋」を撮るには一番のスポットということになります。
そしてここ数年メインフィールドとなっているのが、京都郊外・比叡山麓の八瀬。紅葉の名所として近年名高くなっている瑠璃光院は予約を入れないと拝観できないほどになっており、この季節は観光客で賑わいます。けれども、私からするとこのスポットの魅力はむしろ道路から見た比叡山腹。モミジに加えて多種多様な木々が茂り、彩り豊かな秋が見られるのです。
地図では、こちら。
「もみじの小径」で示した地図ですが、小径に入って歩くよりも、道路側から山腹を眺めた方が華麗な秋色は堪能できると思います。
近場ということもあって、今年も休みのたびに足を運んで、彩りの移り行きを追ってみました。
まず10月末。この辺りのモミジの色づきはやや早めなので、11月を待たずして、もう色づき始めています。
手前にあるのはヤマザクラ。撮影のアングルを定める目印にもしています。
こちらは11月3日、文化の日に。
モミジの一本一本の樹で色づき方も違い、彩りの豊かさを増しています。
その週末、11月6日。1週間で青々としていた樹もすっかり「秋」を感じさせるほどの色づきを見せています。
その翌週。これぞ秋という華麗さ。モミジの背後の樹々も黄色、山吹色、橙と色づいてコントラストが美しい。
先週末が、見頃のピークだったと思います。他のスポットと比べても見頃はやや早い。
ご覧のように、情熱的なまでに秋色が燃えています。背景の秋色もいよいよ深まり、あとは葉を散らしていくでしょう。
このアングル以外でもいろいろと秋の彩りを撮りましたが、それはまたの機会に。
「彩り豊かに撮る」のは、秋色だけでなく、春色も同じ。新緑に山桜や春紅葉を合わせ、春もまたカラフルに撮れる場所が、ここです。
こちらは新緑芽吹いて間もない今年の春先。
まだ淡い緑に、山桜や春紅葉が、やわらかな彩りを添えます。左下にある山桜が、上の秋色写真にあるものと同じです。
これがさらに緑を深めて。手前の山桜で、秋色とだいたい同じアングルで撮っていることもおわかりかと思います。
4月も末になると、まだ新緑らしい瑞々しさは残しつつ、すっかり緑一色の光景となります。新緑の見ごろもこれぐらいまで。
前の記事でも強調したことですが、新緑のベストな時期は4月中。5月では遅すぎます。
そんなわけで、春色撮影スポットは同時に秋色撮影スポット。新緑が美しい場所は黄葉も美しい、ということです。
考えてみれば当然で、新緑と紅葉は表裏一体の現象。落葉樹だからこそ見られるものです。秋に葉を色づかせ、散らした樹々が、翌春には改めて葉を芽吹かせる。その繰り返しにほかならないからです。
そんなわけで、紅葉を、秋色を美しく見ることができた場所は、翌春、新緑を求めてもきっと美しいものが見られるに違いない。これを知っておくと、「自分だけの撮影スポット」を見つける上でも、助けになると思います。
それでは、今回もご覧いただきありがとうございました。