これは、秋の写真ではありません。
京都郊外、秋は紅葉の名所として知られる八瀬で、3月末に撮影したものです。山桜もあるので、春の写真であることがおわかりかと思います。
みなさまは「春紅葉(はるもみじ)」という言葉をご存じでしょうか。
春先、芽吹いて間もない若葉が、まるで秋の紅葉のように見えることがあります。秋ではなく、春の紅葉。それを指すのが「はるもみじ」という言葉です。
芽生えたばかりで葉緑素が十分に生成できていない若葉は、紫外線に弱い。その葉を保護するため、紫外線を吸収するアントシアニンという色素を生成する。これは秋に紅葉をもたらすのと同じ物質なので、赤っぽく色づいて見える、というわけです。
「もみじ」というのは本来葉の色づき全般を指す言葉ですから、この現象はモミジだけでなく、他の落葉樹にもみられます。
葉緑素はほどなく生成されるので、秋のように真っ赤に染まることはありません。短期間で新緑色にとって代わられていきます。
もう青々としてきたモミジもあります。
ヤマザクラも春紅葉が見られる樹で、上の満開の樹と、下のほぼ散って赤い葉を茂らせている樹とが対照的です。野生種なので個体差が大きく、開花時期にも差があるのです。
散るとすぐ青葉を茂らせるソメイヨシノと違い、葉桜になってもまず春紅葉になるのが、ヤマザクラの特徴です。
数日もすればこんなに青々としてくるので、芽吹いて間もない、わずかの間しか見られない光景でした。桜の開花も異例に早かった今年は新緑の芽吹きも早いので、ここではもう春紅葉の時期は過ぎかけています。
ということで、「春紅葉」という現象を知っておくと、春先の季節感を味わううえでも、一段と楽しみが増す、というお話でした。
それでは、今回もご覧いただきありがとうございました。