ぐるぐるハシビロガモ
前回の記事でも触れた京都・二条城。
この城の濠は、冬季には様々な水鳥の渡来地になっています。
ほかにもオオバンやホシハジロもいますし、ヨシガモが入ることもあります。
でも、ここでいちばんの見ものは、なんといってもハシビロガモです。
この間の記事で触れた、名古屋市南部・山崎川にも多数渡来していました。
その名の通り嘴が幅広く、縁にブラシのようなギザキザがついていて、これで水面のプランクトンなどの養分を濾しとって採食します。そのため、水面で口をパクパクさせる行動が特徴的です。
こうした生態からして富栄養な水を好みます。山崎川下流も、工場地帯を流れ、下水処理場からの排水が放出される濁った川で、むしろ好適な生息地です。あまり綺麗でない川の指標とされる野鳥でもあります。
京都では鴨川のような底が透けて見えるほどの澄んだ流れではまず見かけません。京都の渡来地として川ではなく二条城の濠だというのも、彼らの好む環境に最も近いからでしょう。
で、見かけたのがこんな様子。
20羽以上の群れが、こうして寄り集まって、ぐるぐると環を描くように泳ぎまわっています。他の生息地でも観察されており、1, 2羽でも行うことがあるようで、この鳥の特徴的な生態です。
このサイズの大型の鳥がここまで密集して見られるのもなかなかありません。
流れのない濠で、泳ぎ回って水流を起こすことで、餌となるプランクトンなどが入ってきやすくしているのでしょう。渦を起こすことで真ん中にプランクトンを集めているとも言われます。
奪い合っているという雰囲気ではなく、あくまで仲良く共同作業をしているように見えました。
後ろに、蚊帳の外といった感じのヒドリガモが一羽。
この特徴的な行動は特に野鳥に深い興味のない人たち(単に「カモ」としか認識していない)の目も引くようで、足を止めて見入ったり、スマホで撮ったりしている人もちらほら見かけました。
ちなみに、山崎川では排水口の前であり、そこから栄養分豊富な流水があるため、「ぐるぐる」の行動は見られませんでした。それにこちらでは他種の鳥たちも一緒です。
まだ冬の間のしばらくはこの面白い行動が見られるので、よろしければ足を運んでみてください。
それでは、今回もご覧いただきありがとうございました。
春は光から先に訪れる
青空の広がった今日の休み、京都御苑にて。
こんな晴れた日だと今の季節にはっきり感じられること。ずいぶん昼間が明るくなった、ということです。
真昼だと日もずいぶん高くなり、光度が増しているのです。
立春からちょうど1週間になるので、日の長さや高さは、秋で言えば立冬の1週間前。10月末と一致します。もちろん2月半ばと10月末とでは気温は全然違いますが、「光」でみれば同じということです。
すでに立春を過ぎています。そのもとにある二十四節気は「日の長さ」を基準にした季節区分。「気温の季節」でなく「光の季節」であればすでに春というのも、そういうわけです。
今年は暖冬なのでそれほど春の待ち遠しさも感じないとはいえ、やはり一足早く、光から「春」を感じられるのは嬉しいところです。
ロシア語由来の季節表現に、2月頃をさす「光の春」というのがあります。冬の長さも厳しさも当然日本の比ではないロシアでは、春を待ち望む思いもずっと切実でしょう。日本と違って2月ではまだ春は程遠い時期でしょうが、それでも日の長さや高さにはいち早く春が感じられる。そんな思いから生まれた表現に違いありません。
ロシアでなくても、2月に「光の春」は確かに感じられます。春は光から先に訪れます。
ということで、御苑で咲き初めの梅の花。
こちらは二条城の濠。
北西の角から。
ここには、毎年渡来するハシビロガモが群れなしていました。
春を一足早く感じさせるうららかな日差しのもと、鴨川。
実は昨晩の小雨で残った雫で、今朝いくらかプリズムも撮れていました。
こんな感じですが、まだまだあるので別の機会に。まだ前回記事の「雪融けの雫」も語り切っていませんからね。
ということで、今回もご覧いただきありがとうございました。
初積雪と雫の煌き
あまりに遅すぎるというか、暖冬のこの季節、私の住む京都では初の積雪でした。
雪が積もる日が一日もないまま春が来るのかと思っていましたが、さすがにいくら暖冬でもこういう時期はあるようです。
比叡山を見上げる「いつもの場所」でも、ご覧の通り。
雪雲で、比叡山が隠れて見えません。
とはいえ、京都の雪の日というのは、時々青空が覗いてはまた雲が空を覆い、また晴れ上がっては……と繰り返すのが、ありがちなことです。
今日もその例に漏れず、太陽が燦々と射す時間もつかの間ながらありました。そのタイミングを狙って、メインフィールドの森へ。目的はもちろん、雪融けの雫の煌きです。
ということで、撮影できた時間はわずかでしたが、一瞬だけの宝石はいくつも見つけることができたので、ここで分かち合いましょう。
ご覧のように、雪融けの雫が滴るなかでの撮影でした。
そしてこの色鮮やかな煌き。
青紫に何か輝きの深さを感じます。
瑠璃色、というところでしょうか。
虹の輝きに。
赤い輝きながら、冷たさも感じるところです。
ところどころに枝に積もった雪が残っています。
これまた色鮮やかに。
今年に入ってようやくお届けできた、リアルタイム撮影での雫の宝石でした。
まだまだ見つけた宝物はあるのですが、次の機会にとっておきましょう。
ということで、今回もご覧いただきありがとうございました。
南紀白浜・鳥毛洞窟という隠れた名所
今回紹介するのは南紀・白浜町の絶景スポットのひとつ、志原海岸・鳥毛洞窟です。
白浜町といってもすさみ町の境界近くで、温泉街や三段壁や千畳敷、白良浜などのある白浜町の中心からは離れたところにあります。
車でなら近くに道の駅・志原海岸があるのでここに駐車してアクセスすればいいのですが、電車だとアクセスがちょっと難しいです。最寄り駅の紀伊日置からは4kmほど距離があり、ここから歩いてのアクセスは大変。
駅から白浜町のバスを使えば近くまでは(リヴァージュスパひきがわ)行けるものの、本数が少ないうえに電車の時刻とリンクしていないので便利とはいえません。
一駅先の周参見駅か近くのサンセットすさみでレンタサイクルを借り、10kmほど走ってたどりつくのが一番ましな方法のようです。
こちらはすさみ方面から向かったさいに通った、日置川河口の眺望。こちらもなかなかの絶景です。
そして道の駅から歩きます。海岸に出るとこんな感じ。向こうには海食洞が見えますが、これは目的の洞窟ではありません。
どうやら一帯には、海の浸食作用でこうした海食洞が随所にできているようです。
そして洞窟に向かうまで歩く岩場。
海食崖の下に平らな波蝕棚と、地学の教科書通りのような地形が出来ています。
崖の方を見ると地層が地面とほぼ水平に積み重なっています。
つまりこの辺りは大きな地殻変動に見舞われずに、順々に堆積が進んでいったようなのです。岩場も平坦で歩きやすいところです。
現地には何の案内表示もありません。ここが入り口です。
でも私も一度ただの岩の窪みだと思って通り過ぎてしまい、改めてスマホで情報確認してここが洞窟だと気づいて引き返しました。
岩の窪みのように見えますが、これがどうして、結構深く、奥行30mほどあります。
洞窟内から青い海を望む。このスポットの一番の魅力はこれでしょう。
もう一つの穴から。
一帯は志原千畳敷と呼ばれ、こちらもなかなかの絶景です。
こんなふうに悠久の大地の営みとその歴史を感じられるスポットですが、訪れるなら注意する必要があるのが潮の干満です。アクセスできるのは干潮の時間帯だけで、満潮時には一帯が水没してしまい、洞窟までたどりつくことができません。
何も考えずに行って満潮だと後悔することになります。干潮時に行ってもあまり長居して潮が満ちてくると引き返せなくなる恐れもあるので、潮位表をチェックして計画的に訪れる必要があります。
こちらで最寄りの「白浜」を見てください。
それに気を付けたうえで、皆様もどうぞお越しください。
では、今回もご覧いただきありがとうございました。
追記
「鳥毛洞窟」で検索して当記事をご覧くださっている方も多いようですので、他の季節に訪れたときの記事もリンクしておきます。比べてみてください。
濁った川が水鳥の楽園 2020
出張の際に名古屋の実家に寄ることにもなったので、その折に今年も、あの場所に水鳥たちは来ているか?と思い、足を運んでみました。
去年の記事でも取り上げた、ここです。
今年もやはり、賑わっています。
まずハシビロガモが多数。私の住む京都ではなかなか見られない鳥です。
キンクロハジロ、ホシハジロもいて、他にユリカモメやオオバンも。
水鳥があふれているというといかにも自然豊かな場所かと思いきや、これがどうして、工場地帯を流れる濁りきった川。
ご覧の通りです。
山崎川は上流は桜の名所としても知られる清流ですが、南区に入ったあたりから濁りが目立つようになり、私の実家の辺りでは、すっかり濁った都市河川。そんな場所が冬には多数の、しかも多様な水鳥の渡来地となっています。
しかもここはなんと、下水処理場の排水口の付近です。ここにむしろ、水鳥たちが集まるのです。
むしろ処理場からの排水が、鳥たちにとっては栄養分を提供する餌場になっています。ここの代表種であるハシビロガモは、その名通りの幅広い嘴で水面の栄養分を濾しとって採餌するので、その生態に適しているのでしょう。
人間からすれば最も汚れた環境とも思える場所で、こんなふうにたくましく生きている鳥たちの生命にエールを送ります。
それでは、今回もご覧いただきありがとうございました。
凍った雫の宝石 また別の表情
改めて、この輝きをどうぞ。
先週の記事でお届けした「凍った雫の宝石」。同じ雫で、また違った輝きです。
とりわけ、下の雫の虹色の輝きが、虹色といっても紫を基調とした、別の光彩を放っていることにご注目ください。
そして、上の雫も青紫に。
青緑に、放つ光を変えていきます。
二つの輝きが奏でる、二度とない瞬間。
だからこそ、写真の中にとどめてこそその瞬間だけでなく、こうしてみなさまとも分かち合えるというものです。
写真とは、そのためにあるものだと改めて感じます。
では、今回もご覧いただきありがとうございました。