光つかまえて~雫と海と季節のフォトブログ~

写真を通してつかまえた光をお届けしていきます

新緑は5月より4月、とはいうものの~嵯峨・嵐山の新緑~

 この週末2日は本当に良い天気でした。

 例年なら最高の花見日和となるところでしたが、早すぎる開花のため、京都でも桜はほとんど散り尽くしていました。かろうじて花びらが残っている樹々が、いくらか見られる程度です。

 桜の季節が早ければ、新緑の季節も早い。

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新緑は5月より4月」というのは私も繰り返し強調していますが、いつもの年ならこれからようやく芽吹き始めというところで、見頃は4月20日過ぎになるところ。でも今年は、まだ4月も前半だというのに、今が新緑のピークです。

 ということでこの週末は新緑を存分に堪能してきましたので、お届けしましょ

う。

 昨日は午後は仕事だったので、午前中をフルに使っての新緑スポットめぐりでした。

 こちらは出発してすぐ、わが家の近く。まだまとまって残っていた桜、青空に映えます。

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 ということでまずは、嵯峨・広沢池へ。夕焼けの名所としてこちらでも紹介していますが、新緑ももちろん。

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 山桜でしょうか。まだほとんど散らずに満開状態だった桜と、新緑の間から。

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 そして嵐山へ。渡月橋からの眺めです。紅葉の季節にはたびたび来ていますが、新緑を撮影に来たことはそれほどなかったところです。新緑を小倉山が撮りたい西方向なので、撮影に訪れるなら午前中が鉄則。

 桜はだいたい散っていたので、花見客はほとんどいませんでした。

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 北岸から。4月前半とは思えないほど、緑も深まってきています。まるでもう初夏になったようです。この日の気温は低く、もし桜が散っていなければ「花冷え」と呼ばれるぐらいでしたが。

f:id:naosuke21036:20210411154239j:plain 青もみじ越しに、新緑が鮮やかに彩る小倉山を青空の下で。こう撮るのが目的といってもいいところでした。

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 参考までに、わりと近い画角で、去年の11月に撮った秋景色。晩秋は太陽が低いので、山の全面には日がなかなか当たりません。

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 こちらは落柿舎。

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 そして、保津峡まで足を延ばします。ただし今回は駅の辺りまでは行かず、途中の道路にある展望の開けた場所から、峡谷を遠望して撮るのが目的でした。

 鉄橋を望んで。時間的に列車は通りませんでした。

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 そして新緑の保津峡を。

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 望遠で。この辺りはまだまだ緑の色づきは淡いようです。

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 過去の11月に撮影したものと比べてみてください。 

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 11時までには切り上げる必要がありましたが、まだ時間が残っていることを確認して、次なるスポットに向かいます。それは、また次の機会に。

 今回もご覧いただきありがとうございました。

 

 

京都にて、早すぎる新緑の見頃

 新緑は5月より4月。先の記事では、そう強調しました。

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 とはいっても、こんなに早く見頃になるとは、私も思いもよりませんでした。

 桜の季節が終わりを迎える頃から新緑が綺麗になってくる。その萌え出る初めの時期こそいちばん美しい、ということなのですが、あまりに早く咲き、あまりに早く散っていった今年の桜。近所でもかろうじて花びらが残っている樹がほとんどで、例年なら一番の見頃の時期になる今週末には、ほぼ完全に散っていそうです。

 となれば新緑の季節の訪れも当然早いわけで、3月末には、もう南紀はおろか京都でも、すでに芽吹きが見られるようになっていました。

 折よくというか、私は今日は休みだったので、近場ですが、前の記事でも紹介した八瀬の模様を見に行きました。

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 新緑色のなかに山桜。これこそが早い時期にこそ見られる春色のコントラストです。

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 これだけ芽吹いているのは、例年だと4月でも20日前後。2週間ほど季節の進みが早いということになります。

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 比叡山の北、横高山を新緑越しに望みます。山の高い所はまだ芽吹きも遅いようです。

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 そして、春色の山腹。新緑と春紅葉と山桜のコラボです。ソメイヨシノは散っても、まだまだ山桜はところどころに見られます。

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 そして私の好きな構図、春色の対角線。春先には緑の芽吹き具合も違うので、こうやって色とりどりの新緑色を楽しむことができるのです。

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 もう少し位置を変えて。

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 違う色合いの新緑と、山桜と春紅葉。青空に映えます。

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もう一枚。

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 今がちょうど見頃そのもので、例年の4月20日頃を見込んでいたら、その頃にはもう緑もすっかり濃くなっていて、とっくに見頃は過ぎているかもしれません。

 同じテーマで同じ場所で撮っていると、年ごとの季節の違いにも敏感になります。

 実は今日は実に久々に雫を撮る機会もあった日でした。

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 こちらは、また後ほど。

 今回もご覧いただきありがとうございました。

南紀すさみの春

 前回の記事でも触れた、この春の南紀の旅。

 まずここは外せない、私の思い入れるすさみの模様から、お届けします。

 海辺の地を訪れれば、必ず出迎えてくれるのがイソヒヨドリ。青空を背にメタリックブルーが映えます。

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 実際には私の住む内陸の京都でも増え続けていて、今の季節なら街中で声を聞かない日はないほどなので、だんだん出会っても「海に来た」感は薄れつつあるのは事実です。

 でも、こんなふうにマリンブルーをバックにすれば、やはり「イソ」ヒヨドリらしさが出ます。

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 見老津駅からほど近い隠れた絶景スポット・松の下。

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 この奇岩も相変わらずです。

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 そして今回は、南紀の他のスポットもそうでしたが、未訪のスポットに足を運んでみたい、ということで、選んだのがホテル・ベルヴェデーレとすさみ町総合グラウンドのあたり。

 高台に立地しているので上がるまでが大変でしたが、ホテルは右端の白い建物。下に見えるのはヘリの着陸場。

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 ここから青い海を望むのが壮観でした。

f:id:naosuke21036:20210403114345j:plain所々、桜も咲いていました。例年、春の撮影の旅は桜に出会うには時期が早いものでしたが、今年は異例に開花が早く、しかも温暖な南紀ということで、桜まで合わせることにもなりました

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桜どころか、新緑越しに海を望むなんて、いくら南紀でも3月中では予想もできないことでした。

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白浜方面に向かい、小石の鼻。

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安宅崎。過去の同時期に訪れたときと比べても、より明るい光のもとで撮れたという気がしました。

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山桜とともに日置川河口方面。

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 ここから見老津方面に引き返したのですが、印象深かったのが口和深のあたり。

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 ここは夏には海の色がエメラルドに映える場所として、注目のスポットです。

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でも、まだ3月だというのに、海の色はずいぶんエメラルドに近くなっていた気がします。ちょうど干潮だったのも一因ではあるでしょう。海の浅いところほど、青の次に波長の短い緑の光も吸収されきらないからです。

 でもエメラルドがかった鮮やかさは、春というより、初夏の海を見ているような気になりました。

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和深の波止とともに。

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恋人岬の婦夫波も、こんな感じ。夏に撮ったように見えてしまいます。

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見老津駅前。この時間帯ぐらいから雲も出てきたので、これぐらいとしました。

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 南紀の特集は、これからもたびたびお届けしていきたいと思います。

 それでは、今回もご覧いただきありがとうございました。

3月の新緑~京都と南紀~

 

 3月から新緑が見られるとは。

 いろいろあってしばらく更新をお休みしていましたが、久々の投稿はこの話題です。

 先の記事で、新緑は世間で言われているように5月ではなく、4月こそがいちばん美しい。5月に入ってからでは遅すぎる、4月のうちに見逃さなずに撮りたい……というお話をしました。

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 ですが、4月どころか、末とはいえ3月のうちにもう新緑が綺麗になりつつあるとは、私も思いもよりませんでした。2月以降は暖冬だったためか、桜の開花も異例に早かったこの春。新緑の季節も早く訪れるだろうとは予想していましたが、まさか3月中に始まっているとは。

 ということで、今朝の京都のわが家近辺から。冬枯れだった樹にも、もう瑞々しい緑が芽吹いています。

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満開の桜の背に芽生える新緑。定点撮影スポットです。

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もみじもこんなに青々と。まだ3月とは思えません。

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 こちらも桜と新緑のコラボ。青空に映えます。

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散り始めた桜の花びらたちが、青空に舞います。

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 こうした様子は、先週末に訪れた南紀でも、すでに見られました。こちらでの春の海の光景はまた後々の記事で取り上げますが、まずは新緑の話題から。

 京都よりずっと温暖な南紀では、桜や新緑の季節の訪れが早いのも当然とはいえ、訪れた目的はあくまで「早春の海」であって、新緑を撮ることは予定外でした。それがすでにこんな様子です。

 周参見駅から少し西へ行ったあたりの山。もう山桜と新緑のコントラストが鮮やかでした。

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いくら温暖な南紀でも、3月のうちにもう初夏のようです。

もともとこの辺りの植生は、人工的に杉が植えられたところを別にすれば常緑照葉樹が基本で、年中あまり山の色は変わりません。新緑が見られる落葉樹はまばらにしか生えていないのですが、それでも(常緑樹にも新緑はあります)。

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常緑樹の深緑をバックに、仲良く山桜と新緑が並びます。

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新たな緑を芽吹かせた樹越しに、枯木灘の青い海を望みます。

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山桜と新緑越しに、すさみ町と白浜町の境界にある、小石の鼻。

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 と、京都より一足先に新緑も堪能してきた南紀の旅については、後にまた書きます。

 京都に戻っても、やはり異例に早い今年の新緑。まだ始まったばかりとはいえ、これは5月を迎えるどころか4月の早いうちに本当の見頃は終わってしまうかもしれないので、撮影に行ける機会は逃せないところです。

 ということで、今回もご覧いただきありがとうございました。

 

ガイドブックではわからない京都の新緑スポット紹介

  新緑というのは本当の見頃はつかの間です。萌え出て間もない時期の、微妙で繊細な淡い彩りが見られるのは、1週間~10日あるかどうかです。その後も新緑といえば新緑の時期はまだ続きます。しばらくは新緑らしい瑞々しさ、さわやかさは堪能できるでしょう。でもできれば、いちばん新緑らしく美しい時期を見逃さずにおきたいものです。それは確実に4月中であって、5月に入ってからでは完全に遅すぎです。

 ということで、季節に先立って新緑の話を続けて上げていますが、今回は私の住む京都で、美しい新緑が見られる穴場スポットを紹介しましょう。ガイドブックや観光サイトではまず知ることのできない情報のはずです。

 巷に言われる「京都の新緑の名所」はだいたい青もみじのスポットです。「新緑を見る=青もみじを見る」というイメージも定着している感があります。でも新緑が見られるのはもみじだけではありません。「青もみじを見に神社仏閣へ行く」だけでは気づけない、新緑の美しさというものがあります。

 ということで、私のおすすめスポットを紹介します。

 

鴨川上流・出合橋付近

 鴨川を市街地からどんどん上流へと遡って、いよいよ市街地も完全に果てたあたり。京産大のグラウンドよりさらに北側、府道61号線から東に望む山腹です。

 めぼしい観光スポットがあるわけでもなく、もしかすると私以外誰も注目していないかもしれません。でもここが、比類なき新緑スポットなのです。

 ここの魅力は、一角がほとんど落葉樹に覆われていて、山一面が新緑色に彩られる光景が見られることです。

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 杉などの常緑樹も点在しているので、新緑色だけの光景は上手く切り取って撮影する必要がありますが、でもこんなふうにオール新緑色といわんばかりの景観は貴重です。

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 こんな繊細な光景はつかの間しか見られません。1週間から長くて10日程度でしょう。それを過ぎると、次第に緑も豊かで、濃くなってきます。

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 平均すれば4月20日を中心とした前後それぞれ数日間というところですが、年によって変動します。桜の咲き時、散り時を例年と比較することを目安に判断するといいと思います。

 道路から見て山腹は東側にあるので、順光でクリアーに撮るためには午後に入ってからがおすすめです。

 もし早めに着いたら、もう少し北に進んだクリーンセンター付近や雲ケ畑寄りの山でも新緑は見られるので、まずこちらの撮影から入ってもいいでしょう。

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 ただ、アクセスが大変です。車なら少し南にある鴨川公園の駐車場が利用できるので、そこから歩けばいいでしょう。でも公共交通機関では、叡電市原駅か、京都バスの柊野別れバス停が最寄りですが、そこから2km ほど歩く必要があり、かなり大変です(すぐ近くの山幸橋バス停は春分の日しか運行されておらず、使えません)。

 タクシーを利用する手もありますが、むしろレンタサイクルを利用して、鴨川沿いに自転車を走らせるのが良いかもしれません。一番近くでは地下鉄北山駅で借りられます。

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 そこから5kmほどですが、自転車なら鴨川に沿って30分と走らせれば着くでしょう。途中までも、舟形の山をはじめとして、山が新緑に彩られる様子を眺めることができます。杉の人工林が多く、当のスポットほどではないですが。

 アクセスは難しいとはいえ、ベストシーズンの山一面の新緑はそれだけの価値があります。

 

八瀬

 京都郊外、比叡山麓の里です。叡電の終点・八瀬比叡山口で下車します。

 紅葉・新緑の名所として注目を集めている瑠璃光院もありますが、むしろ比叡山をはじめとする、一帯の山々こそが見所です。

 こちらの魅力は、カラフルな春色が堪能できることです。周囲は里山の典型的な雑木林なので、樹種も豊富。色づきの異なる緑を楽しめますし、杉などの常緑樹の濃緑とのコントラストも映えます。さらに山桜も至るところに生えているので、淡い桜色から紅色まで、新緑に彩りを添えてくれます。

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 さらに春紅葉も随所で見られ、いい時期に行けば、春とはこんなに彩り豊かな季節だと実感できるはずです。

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 ポイントとしては、駅からすぐの比叡山腹は府道から東に望むので撮るなら午後。駅を出て歩いた先の山々は西の方に望むので午前。つまり、順序的には後者から撮影したほうがいいということです。比叡山腹の新緑を撮るのは、最後、帰りの前にした方がいいわけです。 

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 アクセスは叡電八瀬比叡山口で下車し、あとは道路沿いに山を眺めつつ歩いていくのがいいでしょう。ただ特に新緑が綺麗な八瀬小学校近くまでは2km強あるので、八瀬駅からは大原方面の京都バスを利用するのも一つの方法です。

「ふるさと前」下車です。京都駅あるいは出町柳駅から大原方面の京都バスで、まずふるさと前まで直接行ってから比叡山口駅まで(歩いて新緑を眺めながら)引き返すというルートも考えてみてもいいかもしれません。

 あるいは現地で自由に移動したければレンタサイクルでここまで来る方法もあります。やはり5km ほど離れていますが、地下鉄北山駅が一番近くです。

 新緑は、ある意味では桜以上に、本当の見頃はつかの間です。

 こんなに早くに桜が開花したともなれば、新緑の季節も例年よりかなり早く訪れそうです。投稿もとりあえず今年の見頃には間に合わせましたが、お読みになったみなさま、一度足を運んでみてください。

 それでは、今回もご覧いただきありがとうございました。

 

5月では遅すぎる~新緑は4月にこそ撮りたい3つの理由~

 新緑の季節と言ったら何月ですか?

 日本でこんな質問を尋ねれば、多少の地域差はあるとしても、大多数の人は5月と答えるでしょう。時候の挨拶でも、5月であれば「新緑の候……」と書き出すのが定番となっているところにもうかがえます。もちろん新緑は、日本各地で5月に見ることができます。

 でも、本当に新緑の魅力と奥深さに触れるためには、また素敵な新緑の写真を撮るためには、5月に入ってからでは遅すぎる。それがこの記事のテーマです。

 新緑のベストな見頃は、4月。芽吹き始めて日もない頃から見てこそ、本当の美しさに出会えます。

 巷では5月になると「新緑の季節になりました」と言われますが、実はその頃には、もうベストな時期は終わりかけています。新緑の季節と言えば5月だと決めてかかって、ゴールデンウィークの頃に新緑を見に行こう……というつもりでは、大切なものをすでに見逃してしまっているかもしれません。

 なぜ4月こそ新緑なのか。その理由を語っていこうと思います。

 基本的に私の住む京都の気候に即してお話ししていきますが、本州中央部の三大都市圏近辺であればほぼ気候条件は同じと考えてよいでしょう。他地域であればいくらか時期のずれがあるでしょうが、おおむね「桜の季節の終わり頃から始まる」を目安にしておけば外すことはないと思います。

 

①春先ならではの繊細な色合い

 最大の理由はこれでしょう。芽吹いて間もない新緑は、まだ葉緑素も生成しきらない。だから淡いパステル調の、繊細でみずみずしい色合いが見られる。この美しさが比類のないものだからです。

  たとえば、こんな感じです。

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 この美しさは、実にはかないものです。本当につかの間にしか見られません。1年のうちでも、10日と見られるかどうかでしょう。私の住む京都であれば、4月20日頃を中心とした前後のそれぞれ数日間ぐらい。それを過ぎれば葉の緑はいよいよ濃くなり、まだ新緑らしいみずみずしさは残っているものの、あの繊細な色合いは失われています。5月に入ってからでは、確実に遅すぎです。

 

 ②彩りの変化を楽しめる

 萌え出て間もない4月から撮り始めるからこそ、淡いパステルグリーンから、しだいに緑を深めていく様子も見られます。同じ場所で撮り続けていると、本当に日刻みというぐらい、緑の彩りも豊かさも変わっていく様子がわかります。

 それぞれ、同じ場所で撮影したものです。

 4月20日頃から。

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数日でこんなに変わります。

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4月末。

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こちらは5月の連休に。もうずいぶん緑も濃くなっていて、繊細な色合いは終わりかけています。

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鴨川上流。やはり4月20日頃。この繊細な色合いです。

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4月も末ぐらいになると、まだ新緑らしさは残るものの、ずいぶん緑も濃くなっているのがわかるでしょう。

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5月も半ばになると、もう新緑というより深緑です。

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こちらは八瀬で、私が(青空と合わせて)「色の三段重ね」と呼んでいるスポット。淡い新緑に春紅葉や山桜が彩りを添えます。

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まだ春紅葉も残っていますが、緑はやや濃くなりました。

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新緑と、低層の常緑のコントラスト。4月末だとこんな感じです。

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5月も連休を過ぎると、低層の杉とほとんど同じ色になり、もはや新緑とは呼べなくなります。

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 5月に入ってからはほとんど緑も仕上がっていて、もうこんな変化はありません。

 

③カラフルな春色が見られる

 4月中だと、山を彩るものは、新緑だけではありません。

まず山桜。挿し木で増やされたソメイヨシノと違って野生種なので花の色も白から淡い桜色、濃いめのピンクまで個体差があります。

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 白の山桜と青空。

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 山桜の花の色の違いもわかるでしょう。

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さらには春紅葉。春先に芽吹いたばかりの葉が、まだ葉緑体が合成されていないために緑色にならず、秋の紅葉のときと同じアントシアニンが勝って赤っぽく見える現象です。モミジだけではなくいろんな落葉樹で見られます。

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この繊細な彩りが好きです。

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さらに、芽吹いて日も浅い時期であれば樹々で緑の濃さもまちまちですから、たださまざまな色合いの新緑色を目にすることもできます。

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これらを合わせて、秋色のカラフルさにも劣らない彩り豊かな光景が見られるのは、4月のうちしかありません。

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 5月に入れば山桜もほぼ散り、春紅葉だった葉もすっかり緑に色づいて、ほぼ緑一色の光景になってしまいます。

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 もちろんその新緑も十分に美しいのですが、4月のカラフルで繊細な春色の景色に比べると、もう大切なものは失われてしまった感が否めません。

 こうした3つの理由から、新緑はなんとしても、4月のうちから撮影に入ったほうがいいのです。だいたい桜の季節の終盤、4月10日ぐらいからスタート。5月の新緑撮りは、せいぜいそれまでの撮影の「締め」ぐらいに見た方がいいぐらいです。もう本当のベストシーズンは終わりかけています。

「新緑=青もみじ」と並んで、「新緑の季節=5月」も固定観念として定着している感があります。このせいで新緑の知られざる美しさがどれだけ見逃されているかと思うと、なんとももったいない気がします。「夕焼けの季節=秋」(本当は夏です)と並んで、ずいぶん罪作りな通念かもしれません。

 今年の撮影に間に合うように、3月のうちに投稿しました。みなさまもぜひ「4月の新緑」ならではの魅力を見逃さないでくださいね。

 桜の開花も早いという予報も出ているようなので、特に早めから準備しておいた方がいいかもしれません。

 それでは、今回もご覧いただきありがとうございました。

美しい新緑に出会うための6つのポイント

 まだまだ春本番には遠いところですが、だからこそ今のうちに、この記事をアップしたいと思います。

 新緑の季節にリアルタイムで載せると、今年の春に見に行こう、撮りに行こうという方々には間に合わないかもしれませんから。季節にしばらく先駆けてお読みいただけた方がお役に立てると思いました。しかも、後述しますが「新緑の季節」というのは、一般に思われているよりもずっと早く始まり、見頃を迎えますから。

 美しい新緑に出会うためには。その新緑を美しく撮るためにはどうするか。私は新緑をここ数年ほどこだわって撮っていますが、そのなかで気づいたことのわかちあいです。

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 これは「夕焼け」関連の記事でも触れましたが、「出会った新緑をどう撮るか」よりも何より、「美しい新緑にどう出会うか、どう見つけるか」がメインです。出会ってからの撮影テクニックについてはいろんな技法書でもすでに書かれているでしょうし、ウェブサイトにもあります。でも、夕景同様に新緑もそのものが美しい被写体なので、とにかく出会うことさえできればそれだけで十分に素晴らしい光景が撮れるというもの。というか、まず出会えなければ何も始まらないですから。

 紅葉の美しい場所は新緑も美しい

 新緑を撮るためには、何より必要なのは新緑が綺麗な場所を見つけること。その基本は、秋に紅葉(もみじだけではありません)が美しかった場所は、春に芽吹く新緑も美しい、ということです。

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 紅葉と新緑というのは表裏一体。落葉樹だから起こる現象なので、当然といえます。これまでの秋に紅葉を見て綺麗だった場所には、新緑の季節になったらまた訪れてみるといい、ということです。早春までの芽吹き前の季節でも、山を見て木々の葉が散った様子なら、春本番には新緑が見られる期待も高まります。

 

②青もみじだけが新緑じゃない

 これが大事です。「新緑=青もみじ」。新緑を見に行くとは、青もみじを見に行くことだというイメージを持っている人は、少なくないのではないでしょうか。

 

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私の住む京都だと、たくさんの「新緑の名所」が観光・旅行サイトなどで紹介されていますが、そのほとんどは寺社仏閣の、もみじの名所としても知られるスポットです。先の「紅葉の美しい場所は新緑も美しい」から言えばその通りなのですが、そこで見られるのはだいたい青もみじです。

 もちろんもみじの新緑は、とても美しいものです。でも新緑といえば青もみじと決めてかかり、他の樹々の新緑を見逃すのは、これまたもったいない話です。青もみじだけでない新緑の美しさに出会うなら、スポットをお寺ばかりに集中しない。むしろ山の緑に注目したいものです。

 

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 特に近郊の里山はすばらしい新緑が見られるところが多い。もともと日本の自然な植生では常緑照葉樹が主流になるはずで、新緑と紅葉の見られる落葉樹林は人の手がたえず入ってきた里山にこそ多いからです。

 私の住む京都でも、そうした里山は、近郊にいくつも見つけることができます。

 

③萌え出てすぐの淡い色を見逃さない

 新緑がいちばん新緑らしく、繊細でみずみずしい色合いを見せるのは、芽吹いて間もない頃にほかなりません。

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 この微妙なパステルの色合いが見られるのは、つかの間です。ほどなく緑も濃くなってきます。それだけにこれを絶対に見逃さずにおきたいものです。そしてこの淡い色から、次第に緑を濃くし、深緑、万緑へと変わっていくまでを見届けるのも、新緑撮影の醍醐味です。

 

④春のカラフルを楽しむ

 新緑をより美しく見るには、緑だけじゃない。他の彩りと取り合わせると、緑の美しさも引き立ち、相乗効果で風景の魅力が何倍にもなります。

 とりわけ、山桜や春紅葉とコラボさせると、新緑だけでない、春色にあふれた光景を撮ることができます。

 

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 春紅葉というのは、春先の芽吹きの季節に見られる葉の独特の色合い。一部の樹には葉を芽吹かせて間もなくは、葉緑体が十分に合成されていないので、秋に紅葉を見せる時と同じアントシアニンの色素が勝って、赤系の色合いが見られることがあります。

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「はるもみじ」といいますが、樹種はモミジとは限りません。いろいろな落葉樹に見られます。秋の紅葉に比べると赤といってもやわらかな色合いなので、新緑と春色を盛り立てる相性は抜群です。

 

⑤撮るなら4月

 これがいちばん大事な点。詳しくは次の記事で語ろうと思いますが、「萌え出てすぐの淡い色合い」や「春のカラフル」を満喫できるのは、私の住む京都近郊に即して言うなら、4月の半ば~下旬です。三大都市圏周辺であれば条件はほぼ変わらないでしょう。5月に入ってからでは、もうベストな時期を逸しているのです。 

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 これについては、後の記事でさらに立ち入って語っていきたいと思います。

 だいたい桜の季節の終わりぐらいから新緑にも目を向け、カメラを向けはじめたいものです。

 

⑥晴れた日に撮る

 これはこと新緑については鉄板の条件でしょう。明るい光のもとでないと、新緑のさわやかさ、みずみずしさは十分に引き立たないのだから当然です。紅葉なら曇り空でもいろいろな工夫ができますが、新緑については、晴れた日の撮影を選びたいものです。青空の下で順光で撮るのもよし、逆光で葉を透過させるような撮り方もありです。

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 ホワイトバランスは「蛍光灯」を選んで緑をより強調する方法もありますが、私は自然な「太陽光」の方が気に入っています。なまじ緑を濃く際立たせると新緑らしさがなくなってしまうということでもあります。

 新緑についてはまだまだ語ることもありますが、今日はこの辺で。

 今回もご覧いただきありがとうございました。