美しい夕焼けに出会うための4つのポイント
夕焼けというのは、風景写真を撮っている人ならほとんど誰もが愛好する撮影テーマでしょう。いろんな写真の技法書で、夕焼けを美しく撮るためのテクニックについて解説されています。でも、そもそもそういった技法を生かすための夕焼けにどう出会うか、まずそれが問題です。
夕焼けというのは、狙って撮れません。そもそも自然が夕焼けを演出してくれることが絶対の条件ですから、当然です。雫の写真も「雨上がりの晴れた朝」でなければ撮れないように、風景の写真を撮っていると、「自然に従う」ことの大切さは切に感じさせられるところです。
出来るのは、美しい夕焼けになりそうな状況を予想して、準備を整えて待つことだけです。カメラを持っておくことはもちろん、可能なら適切な撮影スポットに移動することです。「日の出・日の入りマピオン」などのアプリを使えばその日の日没の方角もわかります。
残念ながらこのアプリが2020年9月でサービス終了とのことなので、代わりに別の同種のアプリのリンクを貼っておきます。
その際に、「今日は夕焼けが綺麗になるだろう」と予測するための、ポイントとなることはいくつもあると思います。ただ偶然に任せるだけだと、素晴らしい夕焼けを目の当たりにしながら「今カメラを持っていれば……」とか「もっといい撮影ポイントにいれば……」と悔やむことも多くなります。同じ夕景は二度と見られないだけに、「空振り」よりも「見逃し」のほうが残念さははるかに大きいですから。それも予測が利けば少なくなるでしょう。
というわけで、いくつか。
1. 晴れているが、ある程度は雲が出ている
雲が染まってこその夕焼けなので、これは当然の条件です。雲一つない快晴では残念です。もちろん太陽が完全に隠れてしまうほど曇っていては夕焼けも見られませんから、相応しい空模様というのがあります。
なお、雲が無くても西空が霞みがちだと、「真紅の夕日」を撮るチャンスです。
2. 西の地平線近くを雲が覆っていない
これが大事な点です。夕焼けというのは地平線下に沈んだ太陽が雲を照らし上げることによって生じる現象ですから、これが雲で遮られてしまうと焼けません。晴れた日でも日没方向の地平線(水平線)近くを雲が覆っているとダメです。
逆に空一面が雲に覆われているような天候でも、地平線近くで雲が切れているとチャンスです。むしろこういう日こそ空一面が染まる最高の夕焼けになることがあります。
目で見て地平線近くの雲が切れていないようでも、西方の山で隠れているところで雲が切れていることもあるので、その点は注意が必要です。また西の空を覆うのが下にあげるような「高空にかかる雲」の場合、日没後の日差しが遮られないことも少なくありません。
3. 西空に、高空にかかる雲が出ている
夕日に染まりやすいのは巻雲(すじ雲、羽根雲)や巻積雲(うろこ雲)など、空の高いところにかかる雲です。沈んだ後の夕日に長く照らされやすいからです。特に巻積雲が染まるとドラマチックになります。
また、高空にかかる雲は日没後かなり後からでも赤く染まった姿が見られます。
逆に晴れた空でも、空の低い層に現れる層積雲はあまり染まらない傾向があります。
4. 夕焼けが最も美しい季節は夏である
これ重要。
清少納言の『枕草子』の影響は大きいのでしょうか。夕暮れといえば秋というイメージが日本人の間には定着しているようです。確かに一年の秋が一日の夕暮れにたとえられるように、秋の季節感と夕暮れの物寂しさとは重なり、趣を増すのは事実です。
けれどもあくまで「夕焼けの美しさ」で考えた場合、燃えるような真っ赤に染まる華麗な夕焼けが見られることが多いのはむしろ夏です。夕日、夕焼けの赤さには大気中の水蒸気が大きく関係しているため、湿度の高い夏の方が赤く染まりやすいのは道理です。9月~10月初めぐらいまではともかく、秋も深まると空気が乾いて澄んでいて、鮮烈に焼けることは少ないのです。
また太陽の位置関係から、西だけでなく北や東の空の雲まで染まる、「全方位の夕焼け」がしばしば見られるのも夏です。
俳句で夕焼けが(秋ではなく)夏の季語とされるのも、こういう理由からでしょう。
また日の長い夏であれば、夕焼けの時間はだいたい7時台。平日に撮るチャンスも増します。もちろん、そのためにカメラを持ち歩いていることが条件です(私自身はスマホでは絶対に満足しません)。帰宅が早ければ帰ってから撮れるかもしれません。
夕焼けを撮るなら、その意味でも夏こそベストな季節です。
この辺りを心得ておくだけでも、偶然の条件だけに任せるよりは、ずっと夕景を撮るチャンスは増すはずです。
夕焼け・夕日の「撮り方」については、私のこだわりはこちら。是非ご覧になっていただければと思います。
それでは。今日もお読みいただきありがとうございました。
(2020年9月29日に改訂、2021年8月28日に再改訂)