すさみで荒れた海を撮る その1 口和深の海岸を歩く
今日の記事からしばらく、今月16日に日帰りで(またも)訪れた、南紀すさみでの撮影の成果をお届けしようと思います。
今回のすさみ行きは急に決めたことでした。金曜日にチェックした天気予報で、土曜日はすさみは大荒れの天気ながら、翌日曜日は快晴になる。しかも前日の余波で日曜日もまだ波は高く、海は荒れ気味だろうという情報を得たことでした。
海を撮るなら、静かに凪いでいる時よりも、むしろ荒れている時に撮りたい。過去の記事でも触れたように、晴れた日ならその方がずっと海の色も鮮やかだからです。
前日から現地入りすることも考えましたが、そもそも土曜日はまったく撮影向きの天候ではないため、あえて日帰りで行くことにしました。
こちらは往路の電車の中からの撮影。以前の記事で紹介した、岩代駅にさしかかるところです。
ご覧の通り海は前日を引きずって荒れ模様であり、目指すすさみの海も同じようだろうと予感させるものでした。
それにしても車窓から海の景色を撮るのってなかなか上手くいきませんね。海沿いを走る間シャッターを押しまくりましたが、7割以上が失敗作でした。
ということで、周参見駅に到着。11時台です。駅から100mと歩けば、もう目の前に海が広がります。すさみ海水浴場です。青空の下、この季節にふさわしい海のエメラルド色が映えます。海水浴場としての海開きはまだです。
そのすぐ横のホテル・サンセットすさみに向かい、レンタサイクルを借りて回るつもりでしたが、ここでまさかの事態。
サンセットすさみが「準備中」とのことで誰も人がいない!!
チェックアウト時刻の10時からチェックイン時刻の15時の間とはいえ、本当に誰もいないとは!! いつ戻ってくるかという表示もなく、これでは自転車を借りられません。
こんなことなら見老津駅を起点にしておけば良かった、あるいは前日にレンタルの予約のために問い合わせておけば……と悔やむも、次の電車までは2時間。待っていたら撮影時間が無くなってしまいます。担当者がいつ戻るかもわかりません。
レンタカーも当のサンセット以外にはなさそうなのでその手段も無し。タクシーを見つけるのもこの田舎では容易では無さそう。天候条件、海の状態にかけては最高の日なのに、こんなことで絶好のチャンスを棒に振るのか……。
かくなる上は仕方がありません。見老津駅まで足で歩き、その途中でいくつものスポットに立ち寄っては撮影することにしました。行程はJR路線の1区間分ながら、約10km。早めに歩けば、移動時間だけなら2時間程度。道は国道42号線に沿うだけですし、過去にも同程度の距離を歩いたことはあるので、行けない距離ではありません。
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地図で示すとこれぐらいの区間です。
そういうわけで、出発。まず最初に海が開けるところから。近くには近畿大学の水産事業場があるところです。空の青さはご覧の通りこれ以上望めないというほど。夏至近くのこの時期は、晴れていれば「明るさ」という点でも年間で一番です。
少し歩みを進めて、熊野古道・大辺路の馬転坂入口あたりの海です。
ここからトンネルを(歩いて)抜けると地名は口和深に。奇岩が並ぶ風景が現れてきます。
逆の、南の方向に向けて撮るとこう。この季節の真昼時には太陽がほぼ真上にあるためどの方向でも逆光にならずに済みます。
そして、荒れている海ならではの色鮮やかさも映えます。
また逆方向に。この辺りは地質的には砂岩泥岩互層が主に広がっていますが、激しい波が打ち寄せる環境にあるのでしょう。長い年月をかけて荒々しく削られた岩場が、一つひとつ個性的です。
こちらは斜め向きになった砂泥互層の泥岩部分が浸食されて、砂岩部分が鋭く迫り出した岩です。
そして向こうに見える海はエメラルド色を帯びているのもおわかりでしょう。
自然の悠久の年月が築いた荒くれた岩の造形は、青い海とのコントラストで見ごたえ十分。この辺りは今までも「通過しながら撮る」ことはしていましたが、ゆっくり一つひとつの風景をかみしめることができたのも足で歩いたからでしょう。
ここまでの行程は3km程度。まだまだ体力の余裕は十分でしたが……。
ということで、今日はこの辺で。ご覧いただきありがとうございました。
久々の雫のプリズム
今日は夏至でした。
とっくに梅雨時ただ中だと思っていましたが、私の住む近畿地方ではまだ梅雨入りが発表されていないと知ったのはこの間のことでした。
梅雨前線の勢力が弱くて空梅雨というのではなく、むしろ太平洋高気圧の勢力が弱いために梅雨前線が十分に押し上げられない結果のようです。確かに最近まで、気候的にまだ初夏と言っていい感じがありました。
雨が少ない分、例年なら雫のプリズム撮影でも特にチャンスの多い6月も、これまで全く機会なしでした。先週日曜は京都に残っていれば撮れたかもしれませんが、この時はすさみまで行っていましたから。
ですが、昨日の夕立から一夜明けて、今朝とりあえず久々の機会がありました。
仲良く並んだ二つの雫です。
右の雫が、次々と色を変えていくのにご注目。
最後の、この真っ赤な輝きが特に印象的でした。
京都はもともと曇りの予報、時折覗く晴れ間からの日差しを待っての撮影でしたから機会も限られ、会心の一枚というのは撮れませんでしたが、久々にこの煌きに出会えたのは嬉しいところでした。
では、今日はこの辺で。
ご覧いただきありがとうございました。
蝶が妖精に見える、この一枚
紫陽花の季節、過去の撮影からこの一枚。
表題の通りです。それ以上の言葉は要らないでしょう。
今回もご覧いただきありがとうございました。
すさみと出会いと「関係人口」
今回から、先週末にすさみを訪れた折のことを書いていこうと思います。
雨上がりの澄みわたる青空の下、荒れ模様でこそなお色鮮やかな海の景色をいくつもカメラに収めた今回の日帰りの旅は、それだけでも大収穫でした。
見老津駅前から、戎島の方向を望みます。激しい波が打ち寄せ、また荒れてこそ海は鮮やかなエメラルド色を帯びます。
こちらは見老津駅のホームから撮影した一枚。激しく波立った海面が逆光を乱反射して、海の青さをより鮮烈に魅せます。
条件的には今までのすさみへの撮影旅行の中でも、もしかすると最良だったかもしれません。
そうした写真を続けてお届けする前に、今回は帰り際に得たひとつの出会いから。
復路の電車の時刻から、間に合うほとんどギリギリまで撮影を続け、発車より7-8分前に見老津駅に到着。あとは駅に昨秋オープンしたカフェ「のんびり屋」の店主の方に挨拶し、電車を待つだけ……のつもりでした。
と、店主さんからもっと早く来ていたら……と惜しむ言葉。店内には、若者たちの一団の姿がありました。
同じ大学の先輩・後輩(すでに卒業して社会人になっている人もいました)ということです。なんでも、東京と名古屋という大都市部から、このすさみを、しかも何度も訪れているとのこと。若者たちによる何かのローカルプロジェクトを行っているのかと思えば、ただこのすさみを好きになり、訪れているとのことでした。「サンセットすさみ」の常連といいます。
これはまさにすさみの「関係人口」。一過性の「観光人口」でもなく、またハードルの高い「移住人口」でもなく、都市部からその地方を好きになって何度も訪れ、土地と継続的な関係を作り上げているような人たちのことをいいます。仕事の一部をその地域で行っている、たびたびその土地で何かのローカルプロジェクトを行う。あるいはその地域が大好きで、都市部にいながらその魅力を精力的に発信している、など。
この「関係人口」こそが、人口減に直面する地方に活力を取り戻すためのキーワードとして注目されている。このすさみ町もまた、「関係人口」がもっと増えていけば、未来に明るい展望が開けるに違いありません。
私自身がすさみの「関係人口」のひとりとして、たとえばこのブログを通してすさみの魅力を発信しています。
「関係人口」という概念については、私が紹介したことを通じて、地元の人たちも地域振興のキーワードとして使っていただいているようで、それも一つの役立ち方かとも思ったほどです。
そして、今回出会ったように、若い人たちにもすさみの「関係人口」が出てきている。代表の人とはFBで繋がり、彼のページも拝見しましたが、若者らしい視点から、すさみの未来のことも考えておられるようで心強いです。
名の知れた観光地ではなくても、探せば絶景をいくらでも見つけられる枯木灘の地。それだけでも測り知れない魅力があるのがこのすさみ町です。もっとその魅力に気づいて、関心を持って足を運ぶ人が増えればとは、かねてから思っています。
このたびであったような若い人たちを通じて「関係人口」の輪が広がっていけば、希望もさらに大きくなるに違いありません。
それだけに、電車待ちの数分間という、ほんのわずかな時間しか今回は顔を合わせて交流できなかったことが心残りでした。また何かの機会に会えればと思います。
改めて、見老津駅にカフェ「のんびり屋」が出来た意義は非常に大きいと感じます。
最高の絶景駅でありながら無人で閑散としていた見老津駅にこの店が出来たことで、地域の人たちの間でも、また訪問者との間でも、格好のコミュニティ・スペースが生まれる。いろんな「出会い」を生む場になっていることを、訪れるたびに感じます。
何か場があれば人は集まり、交わることができる。そんな見本といっていいでしょう。
では、次回からは本格的に、今回の旅でカメラに収めた絶景を紹介していきます。
ご覧いただきありがとうございました。
哀悼と追憶の夕景 最後に
哀悼の思いを込めて、この場所で見届けた夕焼けの写真を紹介するのも、さしあたり今回までとします。
水面も、繊細な色あいに染まります。
こちらは2年前の夏至の頃。一日曇りの日でしたが、巻積雲が広がる空模様からあるいは華麗に染まるかと思い足を運んだところ、この田園ではこれまでで最も美しい夕焼けが見られました。
ピンクモーメントという言葉が似合います。
太陽が沈んだ位置から残照で、光の柱が立ち上がっているのも美しさを添えます。
これからも、この場所では季節のめぐりとともに、何度も写真を撮らせていただくことになるでしょう。京都の市街地からほど近いところで、このような心安らぐ風景をずっと守ってきてくださったおばあさんに、改めて感謝を申し上げます。
遠い世界の彼方から、この写真もどうかご覧になってください。
そして、どうぞご安らかに。
それでは、今回もお読みいただきありがとうございました。
哀悼と追憶の夕景 さらに
今日の帰途、あの田園にまた足を運びました。
日中は曇りでしたが、夏至近く遅い夕暮れ時にはすっかり晴れ。水が張られ、稲が植えられて間もない田に、比叡山が映えます。
夕映えが際立つと、こうです。
写真を撮るたびに、先日訃報を耳にした、この田の地主のおばあさんのことが、そのお顔が、まだまだどうしても偲ばれます。
今回も、追悼のために、ここで過去に撮れた夕景をとりあげていきます。
この日は西の空の雲が華麗に染まりました。田んぼも、それを映し出して夕景の美を2倍にします。
北東の空もこんな風に鮮やかに染まる全方位の夕焼けで、水面ばかりか辺りの民家まで色づきます。
これはまた別の日。夕日が沈むときにはちょうど今日のような快晴になり、染まる雲もありませんでした。なので夕日ばかりを見送ります。
さらに別の日。この日は高空にかかる雲が茜に焼けました。夕空を飛ぶ2羽の鳥が風情を添えます。カルガモです。
夕暮れが深まると、より雲は真っ赤に近づきました。
まだまだ、追悼の思いを遠い世界に旅立たれたおばあさんに送りたいと思います。
では、今回もご覧いただきありがとうございました。