前回の記事で語った、「エメラルド色の海」。
きれいな水であれば無色透明のはずなのに、それが青や緑に見えるのはなぜか、ということに触れました。
この模様は、私の住む京都の鴨川でも、その一端を見ることができます。
写真は丸太町橋の辺り。
鴨川は、京都という大都市のただなかを流れる川でありながら、その透明度の高さが特徴のひとつです。街中のあたりであっても、川底が透けて見えるほどです。
外国、特に大陸の国々から訪れる観光客にとっては、これはちょっとした驚きのようです。彼らからすれば、都市の河川は濁っていて当たり前、とのこと。
日本の川は大陸の人たちからすれば「滝のようだ」とも言われるほど流れが急。それで澱みにくいこと、また鴨川は流域に目立った排水源がなく、川が汚れにくいことなどが理由でしょう(上流にいくつか産廃の処分場があって、いろいろと問題もあるのは確かですが……)。
その鴨川ですが、透明度の高い水であっても、こんなふうに緑がかって見えることがあります。
岸のあたりでは底が透けているように、決して「富栄養で濁った水の緑色」ではありません。
このあたりにも、「エメラルドグリーンの海」に通じる水の色の不思議が見てとれます。
見ると、緑がかって見えるのは川の中でも深くなっている、淵のあたり。
浅瀬は透明です。ここに秘密があります。
海の水が青く見えるのは、水中では波長の長い色の光は吸収されやすく、短波長の青の光だけが吸収されず残って散乱するからです。
光が水中を進む距離が長ければ長いほど、そうなります。
でも距離が短いと、もっと波長の長い光も吸収されません。それで青の次に波長が短い緑の光も残っていれば水は緑色を帯び、つまり「エメラルドグリーン」に近くなります。海でも浅いところは緑がかって見えるわけです。
熱帯の海はエメラルド色が美しいのも、そうした地域には遠浅の海が多いことに加えて、昼間の太陽高度が高い、つまり入射角が小さいので、その分だけ光が水中を進む距離が短くなるのが大きな理由です。日本でも初夏から夏にかけては日照条件は熱帯地方とほとんど変わりませんから、エメラルドの海を堪能できるチャンスだというのは前回の記事で語ったことです。
さて鴨川で見ると、浅瀬は透明で、淵は緑。
浅すぎるとさらに短波長の色の光も吸収されません。そうした光も加わる無色透明に近づきます(光は絵の具とは逆に、いろんな色が混ざると透明に近くなります)。けれどもいくらか深いところでは次第に短波長の光は吸収されていくのでしょう。それで、吸収されずに残った緑の光が目立ってくるわけです。
あくまで川であり、海ほど深くはないので、緑の光まで吸収されて青色に見えるまでには至らないということでしょう。
この辺りはさっきの場所より深くなっているので、水の透明度は変わらないものの緑色の鮮やかさも増します。
深さによって澄んだ水の色が変わっていく現象は、もちろん海でも見られます。
こちらは先日訪れた三重県熊野市・新鹿海水浴場の光景。
その魅力についても、のちの記事では語りたいと思います。
ということで、今回もご覧いただきありがとうございました。