「秋の日はつるべ落とし」は何故か
こちらは、過去の9月に私の住む京都で見られた夕景です。
「秋の日はつるべ落とし」ということわざがあります。井戸のつるべ、つまり水を汲むための桶を落とすように、秋はあっという間に日が暮れる、という意味です。明らかに水道が普及する以前の時代にできた言い方で、今の私たちには今一つピンとこないかもしれません。私自身、もちろん「つるべ」の実物を見たこともありません。ただ、このことわざ自体は今でも使われていて、秋には日の暮れるのが早く感じられるという実感は、私を含めて共有している人は多いと思います。
夏は日が長かったので、それとの比較で夕暮れの早さがひしひしと感じられるということもあるでしょう。考察したウェブページのなかには、そういう主観の問題として解しているところもありました。
でも、実はちゃんと客観的な根拠があるのです。
国立天文台のサイト内の「各地のこよみ」で、私の住む京都の今年夏至から冬至までの日の出日の入り時刻を見てみます。
年ごとに大きな差があるわけではないので、毎年ほぼ同じと考えていいでしょう。
夏至と秋分が基準点となるので、その間をおおむね1か月ごとに区切ります。
6月22日(夏至) 4:43 19:14
7月23日 4:59 19:07
8月23日 5:22 18:38
9月23日(秋分) 5:45 17:54
10月23日 6:09 17:13
11月22日 6:37 16:48
12月22日(冬至) 7:01 16:49
ちなみに秋分の日の昼がきっかり12時間でないのは、日の出・日の入りの定義がそれぞれ「太陽が地平線上に少しでも姿を見せたとき」「地平線下に完全に隠れたとき」だからです。
東京だと15分ほど日の出・日の入りとも早くなります。秋から冬にかけて関東に出張したりすると、暗くなるのが関西にくらべてかなり早いのが実感できるところです。
さてこれで、日の入り時刻を比較してみましょう。
6月と7月の差は7分、7月と8月は29分、8月と9月は44分、9月と10月は41分です。
つまり、夏至周辺の時期よりも、秋分周辺の時期のほうが、日の入りが早くなるペースが確実に速い。「どんどん日が短くなっていく」と感じられるのは、数字上の根拠があるわけです。1週間で10分、半月で20分ほど変わるわけなので、いつの間にか「もうこんな時間に日が沈むの?」と驚くのも当然です。
日の出の時間差が16分、23分、23分、24分なのと比べても、日の入りの変化のペースのほうが高い。そもそも私のような相当な朝型人間でなければ夏に明るくなる頃から起きている人はそうはいないでしょうから、生活実感としても日の出より日の入りの時刻の変化の方が感じやすいでしょう。
こういうわけで、季節の変化が実感できるわけです。
こちらのページでは、立ち入って物理学的に説明していました。
https://tenkyo.net/kaiho/pdf/2007_01/2007-01-09.pdf
では、今回もご覧いただきありがとうございました。