しばらくぶりに、南紀すさみ町の話題で。
最高の海駅。
そう私が信念を持って言うのが、JR紀勢本線・見老津駅です。先の「紀伊半島一周」の記事でも取り上げましたが、今回はこの駅を大々的に語りましょう。
すさみ町にある駅の一つで、中心駅である周参見から一駅、上り方向(串本方面)にあります。
まずは、この1枚をどうぞ。すさみに撮影の旅に初めて出かけた6年前に撮ったものです。
ホームと海との間には国道42号線と電線があるので、それを避けるようにズームで切り取ったものです。
どうでしょう。海の青さが違います。私も車窓からこの駅を通過する際に眺めるだけだった頃にも、「海ってこんなに青いものだったんだ~」と、本気で驚いたぐらいでしたから。
ホームから海を望むと、たとえばこんな感じ。こちらは昨夏の撮影です。
そしてホームを一歩出てみれば、たちまちこれだけの大海原が開けます。それも、ただ海の青一色の単調な光景ではなく、群れなす奇岩と、海沿いまで迫り出した紀伊山地の険しい山並が、絵になる絶景を演出しています。
早春と真夏で、海の色も風景の表情も異なるのをご覧ください。
海岸まで降りて、海と駅をあわせて1枚に収めてみるとこんな感じ。右端に駅舎が見えます。
昨年8月のこの日は海の色もこれ以上望めないほど鮮やかな、夏らしいエメラルドグリーンでした。
紀勢本線沿いには当然ながら海に面した駅はたくさんありますが、眺望の素晴らしさにかけては、ここ枯木灘のただなかにある見老津駅をおいて他にないと思います。
とはいえ、1日の平均乗降客は10人強。停車する電車(もちろん各駅のみ)も上下ともわずか8本という、田舎駅の常です。駅周辺の民家もわずかにあるだけで、駅前にはただ国道が続き、海が広がっている。そんな雰囲気です。もちろん近辺には店らしい店も、長らくありませんでした。
近くに熊野古道・大辺路に属する長井坂の登り口があり、古道歩きの利用客と出会うこともありますが、私が訪れた時でもここで乗降するのは私一人ということも何度もありました。
国道に面しているのでいわゆる「秘境駅」のカテゴリーには入らないでしょうが、絶景駅としてもっと注目を集めても、いや、もっと大々的に売り込んでも良さそうなものを、知られずにいるのは勿体無いところだと思います。
当然無人駅であり、有人駅時代の駅舎も閉鎖されたままでしたが、昨秋改装工事がなされ、喫茶店にして手作りの小物も販売しており、観光案内所も兼ねた「のんびり屋」がオープンしました。
こんなおしゃれな感じになり、観光客や地域の人たちの交流スペースとして生まれ変わっています。
こんなふうに、青い海を眺めながらお茶のひとときを楽しむこともできます。
レンタサイクル業務もスタートしましたので、ここを起点に前に紹介した恋人岬や童謡の園に足を運ぶのもずっと楽になりました。どちらも見老津駅から1-2kmの距離にあり、しかも反対方向なので、電車で訪れた際には、両方に足で行くのはちょっと大変でしたから。
ただ絶景だけを眺めて、あとは誰もいない駅を後にするだけだった頃と比べると、ずいぶん雰囲気も変わりました。イベントが開かれることもあるので、すさみを訪れるならぜひお立ち寄りを。
ここからちょっと足を延ばすだけで、恋人岬や童謡の園だけでなく、知られざる絶景もいろいろ探せるのですが、その話はまた別の機会に。
最後に、駅前から眺めるトワイライトを。こちらは一昨年12月の撮影です。