まずは、この1枚をご覧ください。
硬いはずの岩が、ロールケーキのようにぐにゃりと曲がっています。地質学で「褶曲」と呼ばれるものです。
こんな珍景が、すさみ町にはあります。「フェニックスクリフ」「フェニックスの褶曲」というところです。
ここは地質的には牟婁層群と呼ばれますが、砂泥互層、つまり砂岩と泥岩が交互に堆積して重なり合った地層が、十分に固まる前に地殻変動の圧力を受けてこんな姿になったということです。海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む際に、押しつけられた地層がぐにゃりと曲がったのです。
4000万年前から2000万年前という悠久の年月を経て形成された、大自然の営みのモニュメントです。
これだけの規模の褶曲は学術的にも貴重なもので、中学・高校の地学の教科書にもしばしば掲載されています。
いま学生で地学を勉強中の方でしたら、いちど教科書や資料集を確かめてみてください。
別の箇所からはこんな具合にも。
こちらは他の部分が侵食されて、曲がった岩の硬い部分だけが残されたものです。
こちらは何か自然の砦のような趣があります。
ただこのフェニックスの褶曲は、アクセスが大変です。
ご覧の通りGoogle Map にも出ているのですが、現地では案内は一切ありません。以前は案内板もあったそうですが、今は一切なくなっています。
地元の方のお話では、現時点では海岸まで降りるルートが十分に整備されていないので、安全上の理由から案内を出していないとのことです(ただし整備計画はあるとのこと)。
私も一度は行き方がわからず、別の場所の海岸に降りてしまったこともありました。
次の訪れた時も現地でスマホで検索して、先人の経験を頼りに降りるルートを見つけました。かなり険しい道もあるので、少なくとも動ける靴で行くことは絶対条件です。
海岸まで降りても、干潮で海が荒れていない時でないと、褶曲を存分に観察できる所までは進めません。潮位を事前にチェックしておくことは絶対条件です。
直接すさみでは調べられないので、近くの「白浜」「串本」で見てください。
たとえ干潮でも結構危ない岩場を歩く必要があります。
訪れようという方は、くれぐれもお気を付けの上でどうぞ。安全を期するならば現地のジオガイドさんにお願いしたり、ツアーに参加したりする方法もあります。
こちらの南紀熊野ジオパークのサイトを通して、ガイドさんの案内を申し込むことができます。
自然の造形美が堪能できる一大スポットなので、見逃すのは惜しい場所です。
最後にもう2枚。
魚眼で撮ったのに、もともと岩が曲がっているのであんまり変わったように見えません(笑)。