光つかまえて~雫と海と季節のフォトブログ~

写真を通してつかまえた光をお届けしていきます

朝日と夕日を構図で分ける~右を空けるか、左を空けるか~

 写真で「朝日らしさ」「夕日らしさ」をどう表現するか。

 朝日と夕日の違い。それを写真で判別するのは、とても困難です。

 朝夕の大気の状態によっていくらか見た目の違いが出ることは確かにあるでしょう。夕日のほうがやや赤く染まりやすいと言われます。

 とはいえ真っ赤な朝日も、赤に染まらない夕日も珍しくありません。私も「真紅の夕日」撮りにこだわっているからこそ、快晴の日には多い、ほぼ黄色のまま沈んでしまう「残念な夕日」はたびたび目にします。朝日と夕日で全般的な見た目の違いはさして変わらないのが実際でしょう。

「朝日」「夕日」と言葉の情報が添えられているか、なじみの景色でどの方角に向けて撮ったかが明らかというのでなければ、写真だけでの区別は不可能に近いものです。私もSNSで間違えてコメントしてしまったことがあります。

 ではどうやって「朝日らしく」「夕日らしく」するか。

構図で分ける」のか、私がずっと実践している方法です。

 主役をただ中心に据える、いわゆる「日の丸構図」がいかにも初心者的で、つまらないのは写真撮りの常識ですね。ではどうするか。

 それは、「朝日は右側を空け、夕日は左側を空ける」構図にすることです。別の言い方をすれば、太陽を左に寄せるか、右に寄せるかです。

 これは、動く被写体について、「進行方向を空けるか」「軌跡を空けるか」にかかわっています。下の水面を泳ぐカモの写真をご覧ください。

 進行方向が空いていれば、「これから泳いでいく」ことを、

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 軌跡の方が空いていれば「ここまで泳いできた」ことを、

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見る人に想像させます。

 つまり「未来」を連想させるか、「過去」を連想させるかです。

 言うまでもなく朝日は未来を、夕日は過去を象徴します。

 ですから朝日の場合は昇っていく先、つまり右側を空ける。

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串本・橋杭岩の日の出

 これによって「始まろうとする一日」が表現されます。

 夕日は沈んできた軌跡、つまり左側を空ける。

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すさみ町・恋人岬の夕日

これによって、「過ぎようとしている一日」が表現されます。

 太陽を中心からずらすだけで、こうやって十分に「朝日らしさ」「夕日らしさ」が表現できます。

 いろいろな写真の技法書を読んでも全然このアイディアが載っていないのが不思議なぐらいなのですが、私は右を空けるか左を空けるかを、そのまま「朝日」「夕日」の表現とします。

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令和最初の初日の出。京都・嵯峨にて

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すさみの真紅の夕日

 もちろん朝日・夕日を引き立たせるために山や建物、樹木、島、岬、岩などを合わせることがあり、これらとの位置関係でセオリー通りに行かないこともあります。けれどもそれをどうしても優先したいのでなければ、「左右の原則」に従うことにしました。

 朝日が右に寄っていると窮屈な印象を覚えますし、夕日が左に寄っていると空いた右側がデッドスペースのように感じられます。できるだけ避けたいところです。

 ほんのちょっとした工夫でできることなので、みなさまも実践してみてはいかがでしょうか。

 ちなみに本記事の原題は「朝日は左に、夕日は右に」でしたが、これだと下手をすると政治的な文脈で検索されそうなので(笑)やめました。

 では、今回もご覧いただきありがとうございました。