夕焼けには2つのステージがある~琵琶湖の夕景から~
南紀すさみの振り返りをいったんお休みにして、夕景写真を撮るうえで大切なことの一つを、つい先日出会った夕焼けから語ることにします。
この時期は仕事で琵琶湖方面に向かうことがたびたびあり、時間的にも夕焼けに立ち会うことは可能で、去年もこんな華麗な夕景をカメラに収められたことがありました。
時期的に秋の半ばから冬で、もう夕焼けのベストな季節(当ブログでは再三強調していますが、夏です。念のため)から離れてしばらくになるので、そう頻繁には出会えません。でも、その機会が月曜日に訪れました。
夕暮れ時に西の空を眺めてみると、こんな感じでした。
こちらの記事で書いた通り、日没の方向から光が射している、つまり地平線下の空は開けているということは、夕焼けが生じやすい条件を満たしています。
ただ西空に広がる雲が染まりやすい上層雲(巻雲や巻積雲)ではなく、より低い空にかかる高積雲(羊雲)なのでどこまで染まるか、というところです。
ともあれ、しばらくすれば、こんな感じに。次第に雲が照らされ、色づいてきます。
山の端に沈んだ夕日から放たれる赤い光が鮮烈です。
ズームでは、こうです。
構図上は本来なら夕日は「これまで通ってきた軌跡を空ける=右に寄せて配置する」のが私のセオリーで、これはその反対になります。でも「夕日に照らされる雲が右側にある」ものと解すれば、相応に意味のある構図になります。
こうして雲がオレンジ色に染まって、なかなか見ごたえのある夕景になりました。
そして、その色も引いていきます。
これで今日の夕焼けはおしまい。そう思って、この場を後にしたくなりそうです。
でも、これから10分ほど後にこんな光景が出現することがわかっていれば、ここで撤収するのは賢明ではありません。
先の橙色の夕焼けとはまた違った、この真紅に染まる雲が、つかの間とはいえ見られたのです。
ポイントは、夕焼けには2つのステージがある、ということです。
第1ステージは、沈んでいく夕日が、そのまま周りの雲を照らして染める夕焼けです。上の写真でも、山には隠れても太陽の光がそのまま射しているのが見えますから、まだ地平線下には没していません。
第2ステージは、地平線下に沈んだ太陽が、上空の雲を照らし上げて染める夕焼けです。
太陽が沈んでいけばいくほど赤以外の光が散乱されやすくなりますから、第2ステージのほうがより赤く染まります。第1ステージはまだ波長のより長い光も散乱されていないので、黄色・橙色寄りになるわけです。
言い換えれば、真紅の夕焼けは、第2ステージでこそ見られます。こちらこそ本番といったほうがいいでしょう。
そして大事なのは、この2つのステージは、まるで劇の幕間のように、間が開くということです。いったん色あせる時間がある。上の写真でもご覧いただいた通りです。
なので、第1ステージが終わったところで、今日の夕焼けは終わったと勘違いしやすい。幕間の休憩時間を、終幕と思い込んで劇場を後にしてしまうようなものです。
そうなれば、本当に美しい夕焼けを見逃すことになる。
一度夕焼けの色が退いたかに見えても、それは第1ステージの終わりにすぎないかもしれません。第2ステージがあるかもしれないと予想して、今しばらく待ってみる。これが、美しい夕焼けを見逃さないために大切なのです。
これが、ご訪問いただいたみなさまの夕景撮影に少しでも役立てばうれしいところです。
では、今回もご覧いただきありがとうございました。