光つかまえて~雫と海と季節のフォトブログ~

写真を通してつかまえた光をお届けしていきます

シンプルな色構成の写真

 今回は、ひとつの写真の趣向について語りましょう。

 シンプルな色構成の写真。一枚の写真を彩る色数を、できるだけ少なくした写真にこだわって撮ってみる、ということです。

 よく写真の技法書では、「写真は引き算」ということが言われますよね。主役となる被写体を際立たせるために、余分なものを省く。要らないものが入らないように構図を工夫したり、望遠で切り取ったりする。そんな方法です。

 ここで「色の引き算」を考えてみるということです。

 少ない色だけで構成し、他の色をしたものを除外することで、その限られた色を際立たせる。そんな写真もいいんじゃないか、と思います。

 人工物であれば特定の色だけを配色することは簡単です。国旗などを考えてみればいいでしょう。でも自然の風景を撮った写真であれば、そうはいきません。色のあるものは自然界には無数にありますし、人工物と違って同じような色に見えるものでも色調や濃淡が一つひとつ微妙に違います。自然の条件下では陰影によって色の見え方も変わります。だから一枚の風景写真でも、「色」を数え上げるのは不可能に近いものです。

 だからこそ、自然の彩りに満ちた光景は素晴らしい。新緑の季節と紅葉の季節の、とりわけカラフルな風景を撮るのは、私も大好きです。

 でもその逆を行くように、自然写真でも「カラフルさ」を抑えてみたら、ということです。

 もちろん「1色」というわけではありません。そういう写真は雲一つない青空とか、あるいは逆に一様な曇り空、あるいは季節ではありませんが一面の雪原などにカメラを向ければ、簡単に撮ることができます。でもこれは流石につまらないでしょう。

 でも「1色」に近い写真としては、こんなものはどうでしょう。

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 京都郊外・北山杉の里にて。それにふさわしく、山一面が杉林に覆われた一景です。

 陰影や木々の輪郭はあるものの、ほとんど緑一色。杉の深い緑だけで構成された空間が出現しています。

 同じく北山杉の里。杉の深緑を背に、新緑が浮かび出るという一枚です。

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 陰影や枝、幹の黒を別にすれば深緑と新緑、二種の緑で構成される画面。彩りはいたってシンプルです。

 こちらも北山杉の里。その地でも杉がほとんどなく、珍しく落葉樹ばかりに覆われた山腹があり、新緑の季節にはこんな光景になります。

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 こちらは陰影や幹・枝の黒を別にすればほぼ全面緑系の色で構成されています。杉の濃緑と違ってパステルカラーに近いですが、これまたシンプルな「緑の空間」といえると思います。そのなかで樹々ごとに違う新緑のトーンを楽しめるのではないでしょうか。

 こちらは鴨川上流での新緑色の山。

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 新緑の若葉がほとんどみな同じ色なので、淡い黄緑のほかは幹の黒と青空の、ほぼ3色だけでできた光景といえるのではないでしょうか。それだけに青空の清々しさのもとで、新緑のみずみずしさ、清楚さが引き立っているように思います。

 風景写真をシンプルな色構成にする上では、「青空」は非常に合っているようです。

 こちらは所変わって、京都郊外でも八瀬のとある里山

f:id:naosuke21036:20200430063227j:plain 青空、新緑、深緑の三段重ね。5月に入った頃にはもう新緑といってもかなり濃くなっていて、山の低層の杉の緑とあまり区別がつかなくなっています。それが画面をよりシンプルにしています。春先だと新緑は、むしろカラフルの象徴ともいえるものですが。

 シンプル・イズ・ベストということで、後の記事でもこのテーマにはこだわってみようと思いいます。

 それでは、今回もご覧いただきありがとうございました。