地図にない絶景と関係人口~南紀すさみ町・黒崎~
南紀すさみに寄せて。
先日、SNSのとあるグループで投稿したこの一枚には、地元の南紀の方々も含めて、たくさんの方々からの反響をいただきました。
まるで青水晶という、この澄んだ水の色。
すさみ町の、黒崎にて撮影したもの。川ではなく海で、岩礁が侵食されてできた入江です。
このあたりは砂泥互層がだいたい水平に重なっていて、水底に白い砂岩層が露出していることが、水の透明度もあわせて、こんな繊細なブルーを演出していると思われます。
でもこれは、いわゆる「名所」ではありません。ガイドブックに載るような場所でもなければ、地元の観光協会でも見所として案内されているわけでもない。すさみ町には南紀熊野ジオパークのジオサイトがいくつも指定されていますが、そのなかにも含まれていません。一応Google Map には表示がある程度で、そこに訪れた人のレビューもありません。
そういう意味で、まさに「地図にない絶景」であって、もしかするとここを絶景として語っているのは、私しかいないかもしれません。
いま地域活性化のキーワードとして注目されている「関係人口」という概念。
一時訪れるだけの「観光人口」と、そこに至るまではハードルの高い「移住人口」との間にあるもの。都市部に住んでいながら、ある地域に魅力を見いだして繰り返し訪れ、その土地と人びとに持続的な関わりをつくっている人たちのことを言います。こうした関係人口の広がりこそが、これからの地域の活力には欠かせないものという認識が広まりつつあります。
そのひとつの意義が、その土地の魅力を、地元以外の立場から発信できること。
わけても、地元の人々にとっては見慣れた、あたりまえの光景でも、外部の人たちにとっては絶景そのものとなるようなスポットを見つけ、その魅力を伝えていくというのは、大きな意味があることと思っています。
私が魅せられたすさみ町は、まさに地図にない絶景があふれている場所ですから。
青く美しい海に、悠久の大地の営みが造りあげた奇岩の数々が、いたるところに唯一無二の個性的な景観を織りなしている。それで私が見つけた奇観の数々を、地元で公式に指定された「すさみ八景」に加えて、「プラス八景」という形で紹介してもいるわけです。
先の写真の投稿が地元の方々からも反響をいただけたというのも、外部から、新鮮なものとしてその土地の光景を眺められる、「関係人口」の立場ならではないかと思っています。
もともと私は今在住している京都でも、いっぱいある「名所」よりも自ら見つけた「隠れた絶景スポット」を探しては撮るという流儀でやっていますから、その延長でもあるわけですが。
関係人口の地域に対する寄与のしかたはいろいろあると思いますが、私としてできることはまずこういうことではないかなと感じます。
黒崎の入江が、先の写真ほど美しいブルーを見せてくれるのは、どうやら冬のようです。
こちらは早春、3月に訪れた時の撮影。
これでも水が澄んで十分綺麗なのですが、先の写真ほどのブルーは出ていません。これが夏だったらもっと緑が濃い色合いになってしまいます。
水の透明度なのか、それとも底に藻などがついているかどうかなのか、まだ理由はわかりませんが、見に行くなら冬です。
今年はコロナウィルスのため、恒例の冬のすさみ行きを見送らざるをえなかったのが残念でした。次の冬には収束して、もう一度このブルーを見に行けるようになっていることを願わずにはおれません。
ということで、この黒崎の入江のブルーを、さらに。
夏の撮影からですが、海岸を見渡すと。
やや荒れ気味の海とともに。
それでは、今回もご覧いただきありがとうございました。