夕焼けサンドイッチ
今日は、前回の記事でも最後に触れた、一昨日の燃え上がるような夕景から一枚。
ここ宝ヶ池公園での夕景撮影の魅力は、水面への映り込みを生かせること。
こんなふうに夕焼けを映し出させることで、夕景をさらにドラマティックに魅せることができます。
この一枚も空と水面のシンメトリーを狙って撮影したものですが、見てみると。
夕焼け雲と、その水面への映り込みで、低空と山(とそれらの映り込み)が挟まれ、まるでサンドイッチのようになっているとは。
撮るときここまで意識してはいなかったのですが、なかなか面白い写真になりました。夕焼け雲が横に伸びる形で染まっていたので、こんな構図が実現したわけです。
こちらはその一週間前、同じ宝ヶ池公園で撮影したものの再掲。
こちらは夕焼け雲が映り込みと合わせて放射状になっているのがインパクトがありました。
ここは映り込みで「夕景の美しさが2倍になる場所」としてたびたび紹介していますが、単純な倍加ではないようで、時として映り込みとの相乗効果で美しさは3倍にも4倍にもなりそうです。
夏という夕焼けの季節はまだ始まったばかりなので、今年もまだまだいろいろな光景が見られることを期待します。
ということで、今回もご覧いただきありがとうございました。
The early bird watches the morning glow.
夕焼けが美しい季節は、朝焼けも美しい。
それはほかならぬ、今の時期です。夕焼けも朝焼けも原理は同じ。湿度が高い、つまり「大気中の水分が多い」。それが波長の短い光を散乱させ、赤い光だけを届かせる。そうして空を赤く染める条件が整っているので、当然のことです。
しかも、「全方位の空が染まる」という、夏の夕焼けならではの光景は、朝焼けでも同じように見られます。
ということで、今朝現れた、鮮烈な朝焼けをご覧いただきましょう。
こちらは最初に見た北西の空。普通なら夕焼けに染まる方角ですが、全方位が染まる今の季節にあっては、こちらも鮮やかでした。
東の、比叡山の方角。鮮やかさではやはりこの方向が一番です。
目を北西に転じると、こちらも鮮やかさを増していました。
南東の方角。こちらがいちばん雲が広がっていたので、これだけ染まっています。
数分で北西の空も色が変わっていきます。
ピンクからオレンジへ。
比叡山の方角も、真っ赤からオレンジへ。
そして黄色っぽく。
朝焼けの色の移り行きは、夕焼けのいってみれば逆回しです。クライマックスに向けて黄色からオレンジ、そして赤やピンクへと変わっていくのが夕焼けなら、まず真っ赤に染まったところから、明るくなるにつれてオレンジ、黄色と、より波長の短い光の色に変化して消えるのが朝焼け。
つまり、朝焼けでは最初からクライマックスなのです。
(わかる人にはわかると思いますが、当ブログでは、表立っては語っていませんが私の「別の方面」の趣味の用語を時々盛り込んでいます)
ここにきて題名についてのお話。これはもちろん、「早起きは三文の徳」にあたる英語のことわざ "The early bird catches the worm" が元ネタです。
一年で最も日の長いこの時期に朝焼けを見るためには、かなり早く起きる必要があります。
私の寝室は西窓なので、「目覚めたら窓越しに真っ赤な朝焼け空が見えて……」というわけにはいきません。でも全方位の空が染まるいまの時期なら、西空も朝焼けが広がっていて、その鮮やかさに目が覚めたということは何度もあります。そうなってからでは撮影には手遅れになりかねないので、もっと早く起きて待つ必要がありまする
私の住む京都であれば、4時半に起きてようやく間に合います。これだけの朝焼けに出会えるなら、間違いなく三文以上の価値はあるでしょう。
早起きの私としては「いつもより多少起床時間を早める」程度の時間調整で済むのですが、人によってはこれだけ早く起きるのは大変かもしれません。
元ネタの英語のことわざですが、直訳すれば「早起きの鳥は虫を捕まえる」。実際に本当に早起きの鳥たちは多く、この朝焼けを撮った際にも、近くの森からメジロやカラ類、民家周辺からはスズメやセキレイ、イソヒヨドリなど、いろんな種類の鳥の声が聞こえていました。"worm" といえば代表的にはミミズですが、これらの生物も朝早くにはよく地上に出てくるそうで、当のことわざは、野鳥の生態にちゃんと合致しているという話です。
誰かは不明ですが、最初にこのことわざを言い出した人も有言実行、ちゃんと早起きして野鳥の生態を観察していたからこそでしょう。
では、この季節にこれまで撮れた朝焼けをさらに。
昨日ですが、今朝にあれだけ華麗なものを目にするとずっと控えめだったようにも思えてしまいます。
先週のある日。
同じ日、時間を経ての変化です。
先々週のある日。
というわけで、早起きすればこんな光景に出会えるかもしれないので、みなさまもお試しください。
実は今日は、朝焼けばかりか、こんな情熱的な夕焼けにも出会えたのですが、そちらはまた後の機会に語ることにしましょう。
では、今回もご覧いただきありがとうございました。
呼び合い、煌きを奏でる二つの雫 続
前回の記事でみなさまと分かち合った二つの煌き。
この雫のデュオは、さらに違った色の輝きを見せてくれましたので、続編としてこちらでご紹介します。
先の記事では、左の雫が紫、青などの寒色系の光を放っていましたが、こちらも暖色に表情を変えました。
ダブルオレンジですね。右側はやや黄色寄りの橙、あるいは山吹色というところでしょうか。
右はレモンイエローといっていい色になりました。
左のオレンジが赤みを増します。
左の輝きはマゼンタというところでしょうか。小さく、緑の光も射しています。その一方で右側の方が薄緑で、寒色に色づいてきました。
前回の並びとは、暖色と寒色が入れ替わった感じです。
ほら、すっかり。
これは前回紹介したものの再掲なので、比べてみてください。色がほぼ完全に入れ替わっているのがわかるでしょう。
どれも、同じ2つの雫が見せる表情です。その瞬間にしか、見られないもの。だから、どれもかけがえのない宝物なのです。
ということで、今回もご覧いただきありがとうございました。
呼び合い、煌きを奏でる二つの雫
季節はすっかり梅雨そのもの。
連日のように雨が降り、雫が樹々を濡らしますが、陽射しが注がないので煌くことはありません。
でも、梅雨といっても雨天の日ばかりではないですから、晴れ間の日には、いずれプリズムも撮れることがあるかもしれません。
ということで、アルバムを繙いて、過去の6月に撮れた煌めきたちを振り返ります。
今回紹介するのは、2年前の6月に出会えたもの。この年は梅雨明けがかなり早く、7月に入って早々に明けてしまい、あとは凄まじい猛暑が続いたのを思い出します。
それでも梅雨中は結構雨も降りましたから、晴れ間には機会はありました。
ということで、2つの雫が呼び合うように色を変えていく光景をご覧ください。
いかがでしたでしょうか。右の雫が紫、青、緑といった寒色系、左が橙、黄といった寒色系で、鮮やかなコントラストとともに光のハーモニーを奏でました。
この光のデュオはまだまだ続きますが、今回はこの辺で。
ご覧いただきありがとうございました。
梅雨入り前の夕焼け週間でした
私の住む京都を含む近畿地方も、今日から梅雨に入りました。しばらくは前線の停滞で雨の日が続きそうな予報となっています。
でも、この梅雨に入るまでの一週間は、ほとんど「夕焼けウィーク」といっていいほど夕焼けが見られる日が続きましたので、振り返ってみたいと思います。
こちらは、先週水曜日。すでに当ブログでも取り上げた、まさに「とんでもない」というレベルの華麗な夕焼けでした。
こんな夕焼けが見られたものだから期待水準が上がってしまい、翌日から続く夕焼けには多少物足りなさを感じてしまったのも事実ですが、それでも連日のように夕焼けは出現しました。
こちらが翌木曜日。鴨川・北大路橋からの撮影です。この日も北の空と川面がピンクに染まり鮮やかでした。
金曜日。水曜日と同じく近場の宝ヶ池公園です。この日は西の空が曇りがちでほとんど焼けず、その代わりに南の空の雲がほんのりと染まったぐらいでした。
どの方向に夕焼けが現れるかわからないのも、夏に入っての夕焼けのひとつの特徴です。
土曜日。曇りの一日で、同じく宝ヶ池公園に足を運んだのも「もしかすると焼けるかもしれないから、念のため」というつもりでしたが、今日は焼けないかと思って帰ろうとした直前に、こんなピンクモーメントが訪れました。
日曜日が抜けているのは、この日は雲一つない快晴で、染まる雲が全く無かったからでした。快晴は翌日まで続きましたが、そこまでの青空は梅雨明けまで見られないかもしれません。
その月曜日は大阪まで行く仕事があったので、その折に撮ったものです。前日と違って西の空に巻雲や巻積雲が出ていたので、こちらはチャンス。天満橋上からの撮影で、「都会で夕焼けを撮るなら川に行こう」の実践です。
昨日、火曜日の夕景。また宝ヶ池公園です。前ほど華麗にはなりませんでしたが、映り込みによるシンメトリーの夕焼けが成立しています。
今のところ在宅の仕事が多く、仕事を終えて近場の撮影ポイントに足を運びやすい好条件もありましたが、こうも連日のように夕焼けに出会えたのは貴重な機会だったかもしれません。
梅雨中も晴れ間はありますし、そんな折には結構綺麗な夕焼けも見られたりしますが、まずは「夏になって梅雨入りする前」という、ごく短い季節の谷間を撮影機会として生かせたのはよかったところでした。
それでは、今回もご覧いただきありがとうございました。
実例で学ぶ、夕焼けに出会う技術
風景写真では定番の人気テーマである夕景。
夕焼け撮影で大事なのは、私が思うには8-9割は「美しい夕焼けに出会うこと」であって、「出会った夕景をどう撮るか」という技術的な面は、残りの1-2割程度でしょう。
夕焼けそのものが美しい被写体なので、「ただ撮る」だけでも十分に綺麗な写真になりますから。撮影テクニック面では、「露出をいくらかマイナス補正する」「ホワイトバランスを曇りか日陰に設定する」といった基本的なことを押さえておけば事足りることも多いでしょう。
ということで、夕焼けにどう出会うか。つまり、「この日に夕焼けが現れるかどうか」を予測できるかどうかが、肝心なところです。
基本は、すでにこちらの記事で触れました。
1. 晴れているが、ある程度は雲が出ている
2. 日没方向の地平線近くを雲が覆っていない
3. 日没方向に高空にかかる雲が出ている
という条件を満たしているかどうか、です。
そして季節的には、
4. 夕焼けのベストシーズンは夏である
というのも大事ということでした。
こうしたことを、さらに実例で立ち入ってみていこうというのが今回の記事です。どんな空模様の日に、「今日は焼ける」と読むか、です。
先日の、あまりにも華麗な夕焼けが見られた日のことです。一日雲に覆われた日で、夕焼けなんて見られなさそうにも思えるところでした。でも空模様からこれは凄い夕焼けになるかもしれないと予想し、見事に的中。見逃していたら、たぶん1年は後悔を引きずったでしょう。
すでに「今日は焼ける」という読みのもとで撮影スポットの宝ヶ池公園に足を運んでのことでしたが、行ってすぐだとこんな様子でした。
日が山に隠れた直後で、これだけでもそれなりの夕景です。
でもこの空模様から、「この日の夕焼けは凄いものになる」と予想できるのです。
まず、夕日が沈んだあたりは明るく光が射していますが、これは空を雲が覆っていても、地平線近くが開けている証拠。沈んだ後の太陽の光が遮られずに通るということです。これで夕焼けが現れる条件がまず整っていることがわかります。
そして空を見渡しても、この雲の様子は夕焼けになることを予感させるものです。
一面曇りだと雲の形や種類がわかりにくいことが多いのですが(焼けてはじめて、巻積雲のような典型的な夕焼け雲になりやすいタイプだとわかりました)、それでもポイントは背後の空の青さがうっすらと透けていることです。
つまり、これらの雲は薄い。
これは後の記事でも立ち入りたいところなのですが、夕焼けに鮮やかに染まりやすいのは、厚みのない雲が空一面を覆っているときです。雲が厚ければその厚さで日没後の日差しが遮られやすいですが、薄い雲が「面」で空にかかっていれば、全面にわたって夕日に染まり、壮大な夕焼けになることが期待できるのです。
そしてもう一つ大事なこと。夕焼けには時に2つのステージがある、ということです。こちらをご覧ください。
先の写真から数分後、日没方向を望遠で切り取ったものです。これはこれで十分美しい夕景ですが、これは第1ステージにすぎません。
どういうことかといえば、沈んでいく夕日が、そのまま周りの雲を照らして染める夕焼けです。この場合はまだ赤みが弱く、ご覧のとおり黄色からオレンジ色のことが多いです。
この第1ステージの夕焼けは、日が沈むといったん色が薄れていきます。3分ほど経ってこんな感じに。
これで今日の夕焼けは終わったと思って引き上げてしまう人もいそうです。
でも、これは実に惜しいこと。本当は2幕構成の劇を、第1幕だけ見て終幕と勘違いして劇場を後にしてしまう。オードブルだけ食べて、これからがメインディッシュだというのに「物足りないディナーだったな」と決め込んで帰ってしまうようなものです。
それからしばらくして、第2ステージ、メインディッシュに入ることがあるのです。
先の写真から5-6分ほど経過して、ようやく色づき始めました。
第1ステージが沈んでゆく太陽が直接周りの雲を照らしていたのに対して、第2ステージはすでに地平線下に没した太陽が、上空の雲を照らし上げて染めるものです。
このほうが光は赤みを増して、より鮮やかになります。
そしてさらに5分ほどすると、こうなるわけです。夕焼けに染まると、ようやく雲の形もはっきりします。巻積雲(うろこ雲)で、高空にかかる、典型的な夕焼けに染まりやすい雲です。
そしてこうなります。当然ながら第2ステージの方が本番で、圧倒的に美しい。
日が沈んでいったん夕焼けの色が薄れたかに見えても、すぐに帰らずにこれからが本番かもしれないと踏んであと10分は待つ。これが素晴らしい夕焼けを見逃さないために大事なことです。
たとえばこんな日であれば、期待してみてください。
それでは、今回もご覧いただきありがとうございました。
夕焼けシンメトリーの妙
前回の記事でも取り上げましたが、水曜日に撮れた、とんでもない夕焼け。
緊急事態宣言がとりあえず解除された今も私の仕事はまだ在宅が中心なのですが、その日の仕事を終えた夕暮れ時、少しで歩いてみると外は曇り空。
でもこれは焼けるかもしれない……と読んで、わが家からほど近くにある夕焼け撮影スポット・宝ヶ池公園に足を運びます。
曇りということは、それだけ染まる雲が広がっているということなので、当たれば晴れの日なら絶対に見られない、素晴らしい夕焼けが現れる、という期待です。
そう読んだのは「なんか行ける気がする」という以上の、相応に根拠があったのですが、それは後の記事で触れます。
ということで、前の記事のとおり、見事に的中。そのなかで撮れたもののうちで、「シンメトリー」という趣向で紹介していこうと思います。
こんな感じです。
夕焼け空と水面への映り込みとで、上下対称となっている写真です。
「夕焼けを撮るなら、水のあるところへ行こう!」―これは定石の一つでしょう。海でも湖でも池でも川でも、また今の季節であれば水田でもいいです。
こういう場所は遮るものがなく空が開けていて撮りやすい。そのうえ、水面へのリフレクションがあり、夕景の美しさが倍に―いや、相乗効果でそれ以上に―なります。
リフレクションを狙うなら、波が立ちやすい海より、湖や池の方が向いています。それも風がなく、水面が静かな日です。
ということでさらにもう一枚。
右手に見えるのは国際会議場です。この一枚が特に気に入っているのは、空と映り込みとがあわせて、シンメトリー構図ばかりでなく放射構図まで成立しているからです。
ご覧のように、まるで赤い光が八方に放たれているようです。
こちらはちょっと遊んで魚眼で撮ってみたリフレクション。
夕焼けのクライマックスで、さらに赤みを増して。
望遠で切り取ると、画面全体を赤く染め上げることもできました。
こちらは少し角度を変えて。
真っ赤なフィナーレはこんな感じです。
というわけで、あまりに壮麗だったこの日の夕景。
ご覧いただきありがとうございました。